坂井農場長アドバイス 令和4年度おいしい福井県米を作るために!-第2回-

営農ニュース

1 稲作期間の気象状況

○4月……天気は周期的に変わりましたが、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。暖かい空気の影響を受けやすく、気温は高くなりました。平均気温(14.4度)は平年より1.6度高く、降水量も平年比85%と少なくなりました。

 

○5月……4月と同様、天気は周期的に変わりましたが高気圧に覆われ晴れた日が多くなりました。平均気温(18.5度)は、平年(18.1度)並み、降水量も平年並みになりました(69%)。日照時間は、平年より多く(114%)なりました。

 

○6月……梅雨前線の影響を受けにくく、晴れた日が多くなりました。上旬は気温が平年を下回りましたが、その後太平洋高気圧が強まって暖気が流れ込み、月平均の気温は記録的な高温となりました。6月14日頃に梅雨入りし、28日頃には梅雨明けしたと見られます。 

 

平均気温は、下旬に平年比+5.5度とかなり高かかったため、月平均気温(23.8度)も平年(22.0度)に比べ高くなり、降水量は平年比(54%)と少なくなりました。日照時間は(平年比147%)とかなり多くなりました。

 

〇7月(~中旬)……初旬は晴れた日もありましたが、7月3日は福井で大雨となりました。気温は+2.5度と高く、降水量も平年並みから多く、また日照時間も平年並みから多くなりました。中旬以降、気圧の谷などの影響により曇りや雨となった日が増え、降水量は平年並みから地域により多くなりました。日照時間は、平年並みから少なくなりました。 

2 坂井農場の生育状況について

○ハナエチゼン

坂井農場の5月3日植えのハナエチゼンの幼穂形成期は、6月25日で平年に比べ3日程度早まりました。そのため出穂期も7月11日(昨年16日)で平年に比べかなり早まっています。農業試験場をはじめ県下の他の地点においても、出穂期は平年より早まっています。

 

○コシヒカリ  

適期田植のコシヒカリは、草丈は平年よりやや高く、茎数は平年に比べやや多め目となっています。幼穂形成期は、7月10日でほぼ平年並みでした。

直播のコシヒカリは、平年に比べ草丈長く茎数多めとなっています。幼穂形成期は、7月11日で早まっています(+4日)。

 

○あきさかり

あきさかりの草丈は、平年に比べやや長く、茎数もやや多くなっています。幼穂形成期は7月11日で早まっています(+4日)。

 

■坂井農場

コシヒカリ(5月16日)、直播(5月7日)、あきさかり(5月16日)        

草丈㎝ 茎数(移植本/株 直播本/m)           2022年7月13日現在

 

区分

草丈

平年

茎数

平年

葉齢

平年

葉色

平年

コシ

76.4

74.6

25.2

21.7

10.9

11.4

3.8

3.9

直播コシ

79.0

76.9

26.9

29.8

10.3

11.3

4.2

3.8

 あき

71.0

67.9

27.7

25.9

11.8

11.5

3.9

4.4

 

いちほまれ圃場。奥のほうと手前とで色が異なるのわかりますか?

肥料の入れ方や溶出の違いで育ちや色が変わります。

3 稲刈りまで行う対策はコレ!(水管理、カメムシ対策、土づくり)

最近の格落ち理由を探ると、斑点米や胴割れ粒が多く発生しています。胴割れ粒は、外観形状や炊飯後の食味を損なうため未然に防ぎましょう。

農業試験場で品種ごとの胴割れ粒の発生しやすい条件とその対策を整理したので紹介します。

ハナエチゼン・・・出穂後20日間の平均気温が29度を超えると胴割れ粒が多くなります。特に水管理に留意し適期刈取に努めることが重要です。

コシヒカリ・あきさかり・・・登熟歩合が低下すると胴割れ粒が発生しやすくなります。登熟歩合は籾数が多いと低下します。このための適正なもみ数確保や水管理が重要です。

 

★中干し終了後の水管理、間断通水を!

坂井農場の主要品種の幼穂形成期は、ハナエチゼン(6月25日)、コシヒカリで(7月11日)、あきさかりで(7月11日)で、今年はかってないほど早く幼穂形成期を迎えました。今後間断通水を徹底する方とそうでない方では、コメの品質・食味値に差が出ると言われています。幼穂形成期以降は間断通水を徹底しましょう。

 

ポイント① 幼穂形成期以降は、新しい根が発生しません。このため根をいかに大事にするかがポイントで、間断通水を励行し根に水分と酸素を供給します。

ポイント② 土壌水分が不足すると、生育後期の窒素の吸収が抑制され肥効が劣ることがあり、登熟低下につながります。

 

〇間断通水のやり方(湛水と落水を数日毎に繰り返す)

① 入水 → ②自然落水 → ③入水

 ※フェーン現象や台風などの強風が予想される場合、直前に深水管理とする。

 ※今年のように雨が多い場合は、入水を控え、落水に努めること。

 

〇落水期の目安(品種別)

品  種

落 水 期

ハナエチゼン、コシヒカリ、イクヒカリ、カグラモチ

刈取5~3日前

あきさかり、日本晴、タンチョウモチ

刈取10~7日前

★適期刈り取りを!早刈り・遅刈り弊害を避けよう

 

早刈の弊害

① 青米などの未熟粒が多く、玄米も小さく、収量・品質が低下する。

② 籾水分が高く、乾燥むらになりやすい。

遅刈りの弊害 

・立毛中に胴割米や着色粒が増え、光沢が悪くなる。特に高温期の早生品種。

 

★乾燥調製のとき、気を付けること

 特に早生品種は高温時の刈取となるので、送風温度に注意。

① 倒伏稲、干ばつ稲は二段乾燥をする。(18%で4時間以上休む)

② 仕上げ水分15.0~15.5%まで

 

★斑点米カメムシ類への防除対策を徹底!・・・7月22日注意報発令

・穂揃期と糊熟初期の2回防除を徹底する。

・山沿いの水田ではクモヘリカメムシの発生が多く、8月下旬まで発生が続くので、発生が多い場合は追加防除を行う。

 

主な斑点米カメムシの特徴

区分

アカスジカスミカメ

クモヘリカメムシ

体長

4~5ミリ程度

15~17ミリ

越冬場所

畦畔など水田周辺地の雑草

山林のスギなどの葉

越冬の形態

成虫

年間の発生

5月中旬から30日サイクルで3世代

6月下旬と8月上旬の2世代

成虫の寿命

7~10日

30日

その他

高温年は4世代発生し

中晩生品種にも対策が必要

他のカメムシより発生時期が

遅く、8月9月に増加

 

★いもち病・紋枯病等にも要注意

7月上旬は雨が多く、葉いもち病が発生しやすい状況でした。今年は暑い夏が予想されています。前年に紋枯病が発生した水田では、菌核が残っており本年の伝染源となります。冷夏の時は、いもち、暑い夏の特は紋枯病に特に注意です。

いもち……葉いもちが発生している圃場では、葉いもち病斑から穂への感染を防ぐため、出穂直前の防除は必ず行ってください。

紋枯病……穂ばらみ期の発生株率が、早生では10%以上、中生では20%以上ならば防除が必要です。

 

★米は地力でとれ

転作ローテーションもあり、地力の低下が年々著しくなっています。近年異常気象が発生し、コメの品質・食味低下につながっています。早めに「土づくり」に取り組み、品質向上に努めましょう。

① 土壌改良資材・有機物の施用・・・圃場の乾田化による地力の低下対策を行う

② 10月中旬までに秋起こし・・・稲わらの腐熟の促進を図る

③ 深耕・・・・作土深15㎝以上を確保(根を深く張らせることで、高温に強くする。)

 

★農場長アドバイス

育ちは色でも分かる

 

今年は6月の晴天と高温の影響で生育が早まり、そのためか田んぼが「赤い」という声もあるようです。

田んぼが「赤い」とは葉の色が薄いこと、反対に「黒い」とは葉の色が濃いことをさします。稲作従事者なら聞いたことがある表現かもしれませんね。もしかして坂井管内だけでしょうか? 葉色について呼び方が異なるエリアがありましたら、ぜひお知らせください。

 

さて葉色板を活用していますか?

ご自身の影をつくり、その影で色を見るのが本当の使い方です。陽に照らされた状態の葉は色味が異なりますので正しく使いましょう。

葉緑素計だともっと正確。複数の圃場で使用でき平均値もすぐに計算する優れものです。

★スズメから稲をまもれ!2年目の戦い★

今年も坂井農場のハナエチゼン圃場にスズメたちがやってきました。

スズメ除けの防雀テープ(キラキラテープ)や蛍光糸はあまり効果なし!

空き缶で作った手作りのスズメ除け。キラキラするところには寄りません。

キラキラしない圃場の端の方を狙ってくるスズメ。ハナエチゼンの実りもご覧の通り(涙)

うちの圃場ではこんな対策をしているよ!という方、ぜひお寄せください。

 

次回は収穫後、本年度の結果をもとに振り返ります。