令和6年度愛される福井県米を作ろう!-第1回-

坂井農場の取り組み
坂井農場は1.2haの水田でいろんな試験を行っています。
① 福井県の主要品種(移植、直播)の生育が一目でわかります
② 温暖化等に対応し、より効果的な肥料・農薬の試験
③ 省力・低コスト栽培技術として、直播栽培確立試験
④ 新たに肥料のプラスチック問題に対応した、環境にやさしい肥料試験 など
皆様ぜひとも坂井農場にお立ち寄りください。
〇農場長コメント
肥料高騰が続き、ウクライナ戦争前(2022)に比べると3割ほど価格が上がっています。毎年の気象変動も激しく、これらをふまえ、坂井農場では効果的な肥料や農薬の試験を行っています。
また、今年度から「ポストハナエチゼン比較栽培試験」を行っています。現在2系統まで絞り込み、農場にて収量・品質・食味などについて調査しています。

2. 4月、5月の気象状況【福井気象台】
○4月……高気圧に覆われて晴れた日もありましたが、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日もありました。平均気温は、全ての地点で平年よりかなり高く、9地点で統計開始以降、最も高くなりました。降水量は多くの地点で、上旬はかなり多く、しかし中旬はかなり少なく、下旬は平年並みとなりました。日照時間は、三国、敦賀、小浜などでは平年並み、その他の地点では平年より多くなりました。
○5月上旬……高気圧に覆われ晴れた日もありましたが、6日~8日は前線を伴った低気圧と寒気の影響で雨となりました。平均気温は、越廼と勝山で平年より低く、その他の地点では平年並みとなりました。降水量は、福井、美山、勝山、大野、九頭竜、今庄、小浜で平年より少なく、その他の地点では平年並みとなりました。日照時間は、三国、福井、勝山で平年より多く、その他の地点では平年並みとなりました。
○5月中旬……高気圧に覆われ晴れた日もありましたが、12日~13日にかけて前線や湿った空気の影響により大雨となった所がありました。平均気温は、勝山と大野で平年並、その他の地点では平年より高くなりました。降水量は、三国、福井、美山、武生、九頭竜で平年より多く、その他の地点では平年並となりました。日照時間は、全ての地点で平年並みとなりました。
〇5月下旬……この期間は、寒気や湿った空気の影響で雨や曇りの日が多く、28日は前線を伴った低気圧の影響で大雨となりました。そのため降水量は、平年よりかなり多くなりました。平均気温は、全ての地点で平年並みとなりました。日照時間は、福井、勝山、大野、敦賀で平年並み、その他の地点では平年より少なくなりました。

3.県下各地域の現在の生育状況について
5月下旬から6月上旬にかけて茎数増加が緩慢で、全ての品種で茎数が平年より少なく、葉色も淡い傾向にあります。6月中旬から下旬は、茎数が最も増加する時期なので、茎数の少ないところは浅水管理で茎数増加を促しましょう。目標茎数を確保したなら、溝切・中干しを開始しましょう。
○県下各地域の生育調査結果(令和6年6月6日)
■農業試験場(福井市寮町)
ハナエチゼン(5/2)、コシヒカリ(5/18)、あきさかり(5/2)
区分 | 草丈(㎝) | 平年 | 茎数 (本/㎡) | 平年 | 葉齢 | 平年 | 葉色 | 平年 |
ハナ | 28.2 | 29.8 | 437 | 462 | 8.0 | 8.2 | 4.8 | 4.8 |
コシ | 21.8 | 26.3 | 179 | 226 | 5.3 | 6.2 | 4.0 | 4.3 |
あき | 25.7 | 29.3 | 364 | 456 | 7.8 | 8.1 | 4.8 | 4.8 |
■坂井農場(坂井町上新庄)
ハナエチゼン(5/1)、コシヒカリ(5/15)、直播(5/8)、あきさかり(5/15)
区分 | 草丈(㎝) | 平年 | 茎数 (本/㎡) | 平年 | 葉齢 | 平年 | 葉色 | 平年 |
ハナ | 25.8 | 29.8 | 264 | 328 | 8.2 | 7.7 | 4.5 | 5.0 |
コシ | 27.6 | 28.2 | 144 | 185 | 6.4 | 5.8 | 3.8 | 4.3 |
直播コシ | 20.8 | 23.8 | 119 | 204 | 5.2 | 5.1 | 3.4 | 4.1 |
あき | 23.4 | 23.2 | 182 | 159 | 6.3 | 5.3 | 4.8 | 4.1 |
■県下の現地圃場平均
田植日・直播播種日は想定されず ハナエチゼン(4/25)、コシヒカリ(5/17)、直播(-)、あきさかり(5/15)
区分 | 草丈(㎝) | 平年 | 茎数 (本/㎡) | 平年 | 葉齢 | 平年 | 葉色 | 平年 |
ハナ | 26.7 | 27.1 | 232 | 284 | 7.1 | 7.4 | 4.6 | 4.7 |
コシ | 25.1 | 26.2 | 106 | 151 | 4.6 | 5.5 | 3.4 | 4.0 |
直播コシ | 23.4 | 22.6 | 88 | 221 | 4.3 | 5.2 | 3.4 | 4.3 |
あき | 24.0 | 26.6 | 134 | 206 | 5.2 | 6.7 | 3.9 | 4.5 |

4.今後の対策「水管理は稲の生育をコントロールする重要な作業です!」
・目標茎数を確保するまで、浅水管理
品種 | 今後の管理 |
コシヒカリ | 目標茎数(350~380本/㎡)を確保するまで水深2~3㎝の浅水管理 |
直播コシヒカリ | 水深2~3㎝の浅水管理で分げつを促進する。直播栽培は移植に比べ、葉齢が小さく草丈も小さいうちに分げつが増加する。目標茎数300本/㎡ |
ハナエチゼン・あきさかり等 | ハナエチゼンは分げつ期に入り葉色もやや濃いため、浅水管理に留意し早期に茎を確保する。目標茎数ハナ400本/㎡ あき420本/㎡ |
・溝切・中干しの実施
目標茎数(20本程度)確保したら、田干し・溝切を行いましょう。この後中干しを行いますが、土壌のヒビの程度を見て、圃場に応じた通水を行いましょう。
5.病害虫の発生状況と対策
5月に入り坂井農場でもニカメイチュウの飛来が例年並みに見られています。前年発生の多かったところや、箱剤を施用していないところは特に注意が必要です。
・畦畔草刈り実践デー
年々カメムシが多くなり被害が懸念されます。地域ぐるみの草刈りでカメムシの生息場所を減らしましょう。
1回目 6月22日(土)・23日(日)
2回目 7月6日(土)・7日(日)
〇県農試農作物病害虫発生予察予報(6月3日)
病害虫 | 発生状況等 |
葉いもち | 前年より多く、平年並み。補植用の置き苗は早めに除去病し、土中に埋没すること |
紋枯病 | 平年、前年よりやや多い。中干しを行い、過剰分げつを抑える |
ニカメイチュウ | 越冬成虫の発生は、平年に比べやや早く、平年・前年より多い。5/22多発生注意報 |
イネミズゾウムシ | 発生状況は、平年よりやや少なく、前年より多い |
斑点米カメムシ | 暖冬であったため、カメムシの発生も多い予想 |
※坂井農場でのニカメイチュウの誘殺状況(5/21から調査開始)
今年も県下で発生は早まっており、平年より捕殺数は多くなっています。
調査日 | 5/21~29 | 5/30~6/5 |
捕殺数 | 21 | 15 |

6.水田除草の対策で気を付けること
・除草剤の効果を高めるため、漏水箇所がないか点検を行います。
・使用前に必ずラベルに記載してある「適用雑草と使用方法」等を確認し、ノビエ3葉期までとあったら2葉期ごろに散布するとより効果が期待できます。
・散布にあたっては、よく除草剤が拡散するよう5~6㎝程度の湛水状態に保ち田面を露出させないこと。散布後、7日間は落水やかけ流しはせず、この間やむをえず自然落水により田面が露出した場合は、ゆるりと入水を行いましょう。
・水持ちの悪い水田は手間がかかりますが、粒剤を施用することで効果が安定します。
・止むを得ず雑草の取りこぼしがある場合は、雑草の種類に合わせ中期除草剤や後期除草剤の散布を行いましょう。
※薬剤の種類により、水管理(湛水散布、落水散布)が異なるので、使用基準をよく読み厳守してください。
なお、雑草に応じた対象除草剤については、JA各支店にてお問い合わせください。または県農作物病虫害防除指針を参照ください。

7.アオミドロ・表層剥離が多発!
毎年、アオミドロ等の緑藻類が多く発生する水田が見られます。特に今年のように好天で気温の高い日が続くと、どの圃場でも少なからず発生を見ます。多発生すると苗のなぎ倒しや水温の低下など生育抑制につながり、除草剤効果も期待できません。効果的な対策を行いましょう。
多発生の要因
①地力が高い……土中の有機物やN、Pが多い場合
②水温が生育に適している……水温が10度を超えると増加、25度でピーク!
③日射量が多いと光合成が増加し発生大
対策
① 深水にしないで、浅水管理とする
② 軽い田干しを行う。また落水、入水で新鮮な水を入れる
③ 藻類に効果のある農薬を散布する(モゲトンなど)

JA福井県坂井営農経済センターには、120年を超える歴史を持つ「坂井農場」があります。坂井農場で栽培している水稲の生育について、由川農場長がアドバイスいたします。3回シリーズの1回目は田植え後の管理について紹介します。
1.令和6年度の稲づくりについて
2.4月、5月の気象状況
3.県下各地域の現在の生育状況について
4.今後の対策「水管理は稲の生育をコントロールする重要な作業です」
5.病害虫の発生状況と対策
6.水田除草の対策で気を付けること
7. アオミドロ・表層剥離が多発!
1.令和6年度の稲づくりについて
5月29日に食料安全保障の確保を理念とする「食料・農業・農村基本法」が、四半世紀ぶりに改正・成立しました。この内容のポイントは、「食料の価格形成について持続的な供給に要する合理的な費用を考慮する」という一文が盛り込まれています。これは現在生産者がコスト高騰などにより、農業の持続が困難になってきていることからの対応の現れです。米作りをはじめ日本農畜産物において、再生産可能な価格形成が確立することを希望するところです。
今年3月発表の福井米の食味ランクでは、「いちほまれ」が特A、「コシヒカリ」がAと昨年同様の評価でした。一方で「ハナエチゼン」は前年のAより1ランク下がりA´と残念な結果となりました。特に近年の気象変化によるところの温暖化が、食味・品質低下の大きな要因といわれています。県内でも昨年は記録的な高温となりましたし、今年も昨年並みの高温が予想されています。こうしたことから気象変動に左右されることない米作りがますます重要で、夏場の水管理・秋の土づくり等に留意し、収量品質の向上を図りましょう。