令和 7 年度 愛される福井県米を作ろう!-第 2 回-

1 稲作期間の気象概況(福井地方気象台)
○4月……期間の前半は、低気圧や湿った空気の影響を受け、曇りや雨の日が多 くなりました。後半は高気圧に覆われ晴れた日
が多くなりましたが、 雨や曇りの日もありました。また、期間を通し上空の歓喜や他高く湿 った空気の影響で、大気
の状態が不安定となり一時的に雷雨となった日もありました。
○5月……上旬は高気圧や低気圧が交互に通過し、天気は周期的に変化しました。平均気温は、すべての地区で平年より低くな
りました。降水量は、 三国を除いて平年より多くからかなり多くなりました。日照時間は平年並みとなりました。中
旬は気圧の谷や湿った空気の影響で曇りや雨 となった日もありましたが、高気圧に覆われ晴れた日が多く気温もかな
り高くなりました。下旬は、高気圧に覆われ晴れた日もありました が、上空の気圧の谷や前線の影響で曇りや雨の日
が多くなり、日照時間は、全ての地点では平年より少なくなりました。
〇6月……この期間は、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、梅雨前 線や低気圧の影響で雨や曇りとなり、雷を伴っ
て大雨となった日もありました。また、温かい空気に覆われたことや日射の影響で、気温の高い日が多くなりました。
このため、福井、三国、勝山、大野、美浜、 小浜で6月としての月平均気温(高い方)の値が一位となりました。6 月
10 日に梅雨入りしました。
〇7月上旬……上旬は、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、湿った空気や気圧の谷の影響で雨や雷雨の日もありまし
た。 平均気 温は、平年よりかなり高くなりました。降水量は、全ての地点で平年かなり少なく、日照時間は平年
より多くなりました。
〇7月中旬……太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、中頃には温かく湿った空気の影響で、雨や曇りとなり雷
雨となったところがありました。新潟気象台は、北陸地方が 18日頃梅雨明け (平年より 5 日早く、昨年より 3
日早い)したとみられると発表。 県内どの地点でも気温かなり高く、日照時間かなり多く、降水量 は少なくなり
ました。
〇気象データ(平年値との比較) 福井地点 (風速:春江地点)
旬 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間(時間、%) | 最大風速10 m日数 | 備 考 |
---|---|---|---|---|---|
4 月下旬 | 14.6℃(-0.2℃) | 27.5 ㎜(80%) | 67.5(113%) | 2日 |
|
5 月上旬 | 16.3℃(-0.6℃) | 53.0 ㎜(123%) | 66.0(108%) | 4日 | 強風の日多い |
5 月中旬 | 20.6℃(+2.9℃) | 23.0 ㎜(42%) | 71.4(118%) | 2日 |
|
5 月下旬 | 19.4℃(-0.1℃) | 43.0 ㎜(105%) | 50.2(73%) | 1日 |
|
6 月上旬 | 20.8℃(±0℃) | 45.5 ㎜(199%) | 48.7(79%) | 0日 | 10 日梅雨入り |
6 月中旬 | 24.5℃(+2.5℃) | 51.0 ㎜(107%) | 67.2(137%) | 0日 |
|
6月下旬 | 26.4℃(+3.3℃) | 90.5 ㎜(110%) | 59.8(165%) | 2日 |
|
7月上旬 | 28.7℃(+3.9℃) | 5.0 ㎜(5%) | 66.2(163%) | 0日 |
|
7月中旬 | 29.3℃(+3.5℃) | 19.0 ㎜(19%) | 88.2(195%) | 1 日 | 18 日梅雨明け |

2 坂井農場の生育状況について
県内の農業試験場などの調査地点では、「ハナエチゼン」以外の品種の幼穂形 成期は、おおむね平年並みに進んでいます。ただし、坂井農場ではやや遅れが見 られます。また、葉の色はどの品種もやや濃い状態が続いています。
○ハナエチゼン
坂井農場の 5 月 1 日植えのハナエチゼンの幼穂形成期は 6 月 25 日で平年よ り2日早く、昨年と比べ 2 日程度早くなり、出
穂期は7月 12 日(昨年 16 日) で平年(7/17)に比べ早まっています。
○コシヒカリ
5 月 15 日適期田植のコシヒカリは、草丈は平年よりやや高く、茎数は平年 に比べやや多くなっています。幼穂形成期は、7
月9日で平年に比べ 1 日早ま っています。
〇直播のコシヒカリ
草丈ほぼ平年並み、茎数はやや多くなっています。幼穂形成期は、7 月 14 日で平年より 1 日早まっています。(地域、場所 により格差あり)
○あきさかり
あきさかりの草丈は、平年に比べ長く、茎数も多くなっています。幼穂形成 期は 7 月 15 日でやや遅れて(+1 日)います。
■坂井農場 (田植・播種日)
ハナエチゼン(5/1)、コシヒカリ(5/15)、直播コシ(5/7)、あきさかり(5/15)
草丈㎝ 茎数(移植本/株 直播本/m) 7 月 9 日現在
区分 | 草丈 | 平年 | 茎数 | 平年 | 葉色 | 平年 |
---|---|---|---|---|---|---|
ハナエチゼン | 79.2 | 67.9 | 31.0 | 22.3 | 4.8 | 4.4 |
コシヒカリ | 72.9 | 68.7 | 25.6 | 22.5 | 4.6 | 3.9 |
直播コシ | 70.4 | 71.6 | 189.0 | 154.2 | 4.4 | 4.0 |
あきさかり | 69.4 | 59.8 | 32.2 | 23.7 | 4.2 | 4.2 |
3 今後の対策はコレ!
今年も昨年や一昨年と同じように、暑い夏になると予想されています。こうした猛暑の年には、米の品質が下がる原因として、斑点米や胴割れ粒、乳白粒の発 生が多く見られます。
特に「胴割れ粒」は、外観形状や炊飯後の食味を損なうため、できるだけ早い 段階で防ぐことが大切です。 福井県農業試験場では、品種ごとに胴割れ粒が発生しやすい条件や、その対策をまとめていますので、ここでご紹介します。
ハナエチゼン……出穂後 20 日間の平均気温が 29℃を超えると胴割れ粒が多くなります。特に水管理に留意し適期刈取に努める
ことが重要です。 (出穂期が 7/11 の場合、成熟期の予想は 8/10~11 の見込み)
コシヒカリ・あきさかり……登熟歩合が低下すると胴割れ粒が発生しやすくなります。登熟歩合は籾数が多いと低下します。こ
のための適正なもみ数確保や水管理が重要です。
★中干し終了後の水管理、間断通水を!
県内のすべての圃場では、どの品種も幼穂形成期の後半から出穂期を迎えています。この時期以降、間断通水をしっかり行う
かどうかで、コメの品質や食味 値に違いが出るとされています。そのため、幼穂形成期以降は、間断通水を徹底 しましょ
う。 特に猛暑の年は、土壌に適度な水分を保つことが非常に重要です。
ポイント① 幼穂形成期を過ぎると、新しい根は出ません。今ある根をどれだけ 大切に保つかが重要になります。そのために
は、「間断通水」を行 い、根に適度な水分と酸素をしっかり届けることが大切です。
ポイント② 土壌水分が不足すると、生育の後半に必要とする窒素をうまく吸 収できなくなります。その結果、肥料の効果が
十分に発揮されず、 登熟低下になるおそれがあります。

潅水の様子
〇間断通水のやり方(湛水と落水を数日毎に繰り返す)
① 入水 → ②自然落水 → ③入水
※こまめな間断通水(入水⇒自然落水の繰り返し)で飽水状態(溝や足跡に水が溜まっている状態)を維持しましょう。
※フェーン現象や台風などの強風が予想される場合、直前に深水管理としま す。
※雨が多い場合は、入水を控え、落水に努めることが大切。
〇落水期の目安(品種別)
品 種 | 落 水 期 |
---|---|
ハナエチゼン、コシヒカリ、いちほまれ カグラモチなど | 刈取 5~3 日前 |
あきさかり、日本晴、タンチョウモチなど | 刈取 10~7 日前 |
★適期刈取(早刈り・遅刈り弊害)
早刈の弊害
・青米などの未熟粒が多く、玄米も小さく、収量・品質が低下する。
・籾水分が高く、乾燥むらになりやすい。
遅刈りの弊害
・立毛中に胴割米や着色粒が増え、光沢が悪くなる。特に高温期の早生品種。
★乾燥調製で気を付けること
特に早生品種は高温時の刈取となるので、送風温度に注意。
① 倒伏稲、干ばつ稲は二段乾燥をする。(18%で 4 時間以上休む)
② 仕上げ水分 15.0~15.5%まで

7 月の参観デーには多くのご参加ありがとうございました。
★斑点米カメムシ類への防除対策を徹底すべし! 7月9日斑点米カメムシ注意報発令平年より多く、前年よりやや多い。
今年もホソハリカメムシ、カスミカメムシ類が多く見受けられています。
・穂揃期と糊熟初期の 2 回に分けて、しっかりと防除を行いましょう。 特に水田周縁部に多く生息しているので、畦畔も含めて
防除することが大切です。
・出穂期以降は、周囲の草刈りを控えましょう。 この時期の草刈りは、カメムシ類が隠れ場所を失い、水田内へ移動する原因に
なります。
・麦跡の雑草地などでは、カメムシ類が多く繁殖しています。 そのため、こうした場所に隣接する水田では、特に防除を徹底し
てください。

ホソハリカメムシ

アカスジカスミカメ

アカヒゲホソミドリカスミカメ
★ニカメイチュウ対策 今年も一部の地域で発生が確認されています。毎年県内各地で被害が散見 されています。圃場で被害が見られたり、前年多かったところは防除を行い ましょう。
★いもち病・紋枯病等にご用心
6 月 10 日の梅雨入り後、一時雨が多く、気温高く、葉いもち病が発生しや すく、一部の地域で見られました。ただ7月に
入り好天が続き、梅雨明け以 降は、降水少なく猛暑となっているため現在進展は見られていません。 紋枯病については、前年
発生した水田では、菌核が残っており今年の伝染 源となります。特に暑い夏は紋枯病の発生に注意が必要です。
いもち……葉いもちが発生している圃場では、葉いもち病斑から穂への感染を 防ぐため、出穂直前の防除は必ず行ってくださ
い。
紋枯病……穂ばらみ期の発生株率が、早生では 10%以上、中生では 20%以上 ならば防除が必要です。
この夏農作業中の熱中症での死亡者が全国で急増しています。 こまめな水分補給を! |
★米は地力でとれ! 土づくりで貯金の一部を蓄えましょう!
転作のローテーションなどの影響で、地力が年々著しく低下してきています。 さらに、近年は異常気象の影響もあり、お米の品質や食味の低下が見られるよう になっています。これからの安定した品質と収量のためにも、できるだけ早い段 階から「土づくり」に取り組みましょう。
① 土壌改良資材・有機物の施用・・・圃場の乾田化による地力の低下対策を 行う
② 10 月中旬までに秋起こし・・・稲わらの腐熟の促進を図る
③ 深耕・・・作土深 15 ㎝以上を確保(根を深く張らせることで、高温に強く する)
次回は収穫後、本年度の結果をもとに振り返ります。
坂井営農経済センターには、120 年超の歴史を持つ試験栽培の圃場「坂井農場」 があります。由川坂井農場長が水稲の生育について報告し、今後の重点管理について述べます。
1.稲作期間の気象状況
2.坂井農場の生育状況について
3.今後の対策はコレ!
・中干し終了後の水管理、間断通水!
・適期刈取ー早刈り・遅刈り弊害を知ろう
・乾燥調製で気を付けること
・斑点米カメムシ類への防除対策を徹底すべし!
・ニカメイチュウ対策
・いもち病・紋枯病等にご用心
最後に、今年も暑い!熱中症対策を! 米は地力でとれ!土づくりで貯金の一部を蓄えましょう!