令和 7 年度 愛される福井県米を作ろう!-第 2 回-

営農ニュース

 

                 

坂井営農経済センターには、120 年超の歴史を持つ試験栽培の圃場「坂井農場」 があります。由川坂井農場長が水稲の生育について報告し、今後の重点管理について述べます。

 

1.稲作期間の気象状況 

2.坂井農場の生育状況について

3.今後の対策はコレ! 

  ・中干し終了後の水管理、間断通水! 

  ・適期刈取ー早刈り・遅刈り弊害を知ろう 

  ・乾燥調製で気を付けること 

  ・斑点米カメムシ類への防除対策を徹底すべし! 

  ・ニカメイチュウ対策 

  ・いもち病・紋枯病等にご用心 

 

最後に、今年も暑い!熱中症対策を! 米は地力でとれ!土づくりで貯金の一部を蓄えましょう!

1 稲作期間の気象概況(福井地方気象台)

○4月……期間の前半は、低気圧や湿った空気の影響を受け、曇りや雨の日が多 くなりました。後半は高気圧に覆われ晴れた日

     が多くなりましたが、 雨や曇りの日もありました。また、期間を通し上空の歓喜や他高く湿 った空気の影響で、大気

     の状態が不安定となり一時的に雷雨となった日もありました。

 

 ○5月……上旬は高気圧や低気圧が交互に通過し、天気は周期的に変化しました。平均気温は、すべての地区で平年より低くな

      りました。降水量は、 三国を除いて平年より多くからかなり多くなりました。日照時間は平年並みとなりました。中

      旬は気圧の谷や湿った空気の影響で曇りや雨 となった日もありましたが、高気圧に覆われ晴れた日が多く気温もかな

      り高くなりました。下旬は、高気圧に覆われ晴れた日もありました が、上空の気圧の谷や前線の影響で曇りや雨の日

      が多くなり、日照時間は、全ての地点では平年より少なくなりました。

 

 〇6月……この期間は、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、梅雨前 線や低気圧の影響で雨や曇りとなり、雷を伴っ

     て大雨となった日もありました。また、温かい空気に覆われたことや日射の影響で、気温の高い日が多くなりました。

     このため、福井、三国、勝山、大野、美浜、 小浜で6月としての月平均気温(高い方)の値が一位となりました。6 月

        10 日に梅雨入りしました。 

 

〇7月上旬……上旬は、高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、湿った空気や気圧の谷の影響で雨や雷雨の日もありまし

       た。 平均気 温は、平年よりかなり高くなりました。降水量は、全ての地点で平年かなり少なく、日照時間は平年

       より多くなりました。

 

 〇7月中旬……太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、中頃には温かく湿った空気の影響で、雨や曇りとなり雷

        雨となったところがありました。新潟気象台は、北陸地方が 18日頃梅雨明け (平年より 5 日早く、昨年より 3

        日早い)したとみられると発表。 県内どの地点でも気温かなり高く、日照時間かなり多く、降水量 は少なくなり

        ました。 

  

気象データ(平年値との比較) 福井地点 (風速:春江地点)

平均気温

降水量

日照時間(時間、%)

最大風速10 m日数

備 考

4 月下旬

14.6℃(-0.2℃)

27.5 ㎜(80%)

67.5(113%)

2日 

 

5 月上旬

16.3℃(-0.6℃)

53.0 ㎜(123%)

66.0(108%)

4日

強風の日多い

5 月中旬

20.6℃(+2.9℃)

23.0 ㎜(42%)

71.4(118%)

2日

 

5 月下旬

19.4℃(-0.1℃) 

43.0 ㎜(105%)

50.2(73%)

1日

 

6 月上旬

20.8℃(±0℃)

45.5 ㎜(199%)

48.7(79%)

0日

10 日梅雨入り

6 月中旬

24.5℃(+2.5℃)

51.0 ㎜(107%)

67.2(137%)

0日

 

6月下旬

26.4℃(+3.3℃)

90.5 ㎜(110%)

59.8(165%)

2日

 

7月上旬

28.7℃(+3.9℃)

5.0 ㎜(5%)

66.2(163%)

0日

 

7月中旬

29.3℃(+3.5℃)

19.0 ㎜(19%)

88.2(195%)

1 日

18 日梅雨明け 

2 坂井農場の生育状況について

県内の農業試験場などの調査地点では、「ハナエチゼン」以外の品種の幼穂形 成期は、おおむね平年並みに進んでいます。ただし、坂井農場ではやや遅れが見 られます。また、葉の色はどの品種もやや濃い状態が続いています。

○ハナエチゼン 

 坂井農場の 5 月 1 日植えのハナエチゼンの幼穂形成期は 6 月 25 日で平年よ り2日早く、昨年と比べ 2 日程度早くなり、出

   穂期は7月 12 日(昨年 16 日) で平年(7/17)に比べ早まっています。

 

 ○コシヒカリ   

 5 月 15 日適期田植のコシヒカリは、草丈は平年よりやや高く、茎数は平年 に比べやや多くなっています。幼穂形成期は、7

   月9日で平年に比べ 1 日早ま っています。 

 

〇直播のコシヒカリ 

 草丈ほぼ平年並み、茎数はやや多くなっています。幼穂形成期は、7 月 14 日で平年より 1 日早まっています。(地域、場所      により格差あり)

 

 ○あきさかり 

 あきさかりの草丈は、平年に比べ長く、茎数も多くなっています。幼穂形成 期は 7 月 15 日でやや遅れて(+1 日)います。

 

■坂井農場 (田植・播種日)

 ハナエチゼン(5/1)、コシヒカリ(5/15)、直播コシ(5/7)、あきさかり(5/15)

 

草丈㎝ 茎数(移植本/株 直播本/m)                                  7 月 9 日現在

 区分 

 草丈

 平年

 茎数

 平年

 葉色

 平年

 ハナエチゼン 

79.2

 67.9

31.0

 22.3

 4.8

 4.4

 コシヒカリ

72.9

 68.7

 25.6

22.5

4.6

 3.9

 直播コシ

 70.4

71.6

 189.0

 154.2

 4.4

4.0

あきさかり 

69.4

 59.8

32.2

23.7 

4.2

4.2

3 今後の対策はコレ!

 今年も昨年や一昨年と同じように、暑い夏になると予想されています。こうした猛暑の年には、米の品質が下がる原因として、斑点米や胴割れ粒、乳白粒の発 生が多く見られます。 

 特に「胴割れ粒」は、外観形状や炊飯後の食味を損なうため、できるだけ早い 段階で防ぐことが大切です。 福井県農業試験場では、品種ごとに胴割れ粒が発生しやすい条件や、その対策をまとめていますので、ここでご紹介します。 

 

ハナエチゼン……出穂後 20 日間の平均気温が 29℃を超えると胴割れ粒が多くなります。特に水管理に留意し適期刈取に努める

        ことが重要です。 (出穂期が 7/11 の場合、成熟期の予想は 8/10~11 の見込み)

 

コシヒカリ・あきさかり……登熟歩合が低下すると胴割れ粒が発生しやすくなります。登熟歩合は籾数が多いと低下します。こ

             のための適正なもみ数確保や水管理が重要です。 

 

★中干し終了後の水管理、間断通水を! 

  県内のすべての圃場では、どの品種も幼穂形成期の後半から出穂期を迎えています。この時期以降、間断通水をしっかり行う

  かどうかで、コメの品質や食味 値に違いが出るとされています。そのため、幼穂形成期以降は、間断通水を徹底 しましょ

  う。 特に猛暑の年は、土壌に適度な水分を保つことが非常に重要です。

 

  ポイント① 幼穂形成期を過ぎると、新しい根は出ません。今ある根をどれだけ 大切に保つかが重要になります。そのために

       は、「間断通水」を行 い、根に適度な水分と酸素をしっかり届けることが大切です。

 

  ポイント② 土壌水分が不足すると、生育の後半に必要とする窒素をうまく吸 収できなくなります。その結果、肥料の効果が

       十分に発揮されず、 登熟低下になるおそれがあります。

潅水の様子

潅水の様子

   

〇間断通水のやり方(湛水と落水を数日毎に繰り返す) 

   ① 入水 → ②自然落水 → ③入水 

 ※こまめな間断通水(入水⇒自然落水の繰り返し)で飽水状態(溝や足跡に水が溜まっている状態)を維持しましょう。 

 ※フェーン現象や台風などの強風が予想される場合、直前に深水管理としま す。

 ※雨が多い場合は、入水を控え、落水に努めることが大切。

〇落水期の目安(品種別)

品    種

落  水  期

ハナエチゼン、コシヒカリ、いちほまれ カグラモチなど

刈取 5~3 日前

あきさかり、日本晴、タンチョウモチなど

刈取 10~7 日前

★適期刈取(早刈り・遅刈り弊害) 

   早刈の弊害 

    ・青米などの未熟粒が多く、玄米も小さく、収量・品質が低下する。 

    ・籾水分が高く、乾燥むらになりやすい。

   遅刈りの弊害 

     ・立毛中に胴割米や着色粒が増え、光沢が悪くなる。特に高温期の早生品種。

★乾燥調製で気を付けること

   特に早生品種は高温時の刈取となるので、送風温度に注意。

      ① 倒伏稲、干ばつ稲は二段乾燥をする。(18%で 4 時間以上休む) 

      ② 仕上げ水分 15.0~15.5%まで

 

7 月の参観デーには多くのご参加ありがとうございました。

7 月の参観デーには多くのご参加ありがとうございました。

  

★斑点米カメムシ類への防除対策を徹底すべし! 7月9日斑点米カメムシ注意報発令平年より多く、前年よりやや多い。

 今年もホソハリカメムシ、カスミカメムシ類が多く見受けられています。

 

・穂揃期と糊熟初期の 2 回に分けて、しっかりと防除を行いましょう。 特に水田周縁部に多く生息しているので、畦畔も含めて

 防除することが大切です。

・出穂期以降は、周囲の草刈りを控えましょう。 この時期の草刈りは、カメムシ類が隠れ場所を失い、水田内へ移動する原因に

   なります。

・麦跡の雑草地などでは、カメムシ類が多く繁殖しています。 そのため、こうした場所に隣接する水田では、特に防除を徹底し

 てください。

  

ホソハリカメムシ

ホソハリカメムシ

アカスジカスミカメ

アカスジカスミカメ

アカヒゲホソミドリカスミカメ

アカヒゲホソミドリカスミカメ

  

ニカメイチュウ対策 今年も一部の地域で発生が確認されています。毎年県内各地で被害が散見 されています。圃場で被害が見られたり、前年多かったところは防除を行い ましょう。 

 

★いもち病・紋枯病等にご用心

  6 月 10 日の梅雨入り後、一時雨が多く、気温高く、葉いもち病が発生しや すく、一部の地域で見られました。ただ7月に

 入り好天が続き、梅雨明け以 降は、降水少なく猛暑となっているため現在進展は見られていません。 紋枯病については、前年

 発生した水田では、菌核が残っており今年の伝染 源となります。特に暑い夏は紋枯病の発生に注意が必要です。

 

 いもち……葉いもちが発生している圃場では、葉いもち病斑から穂への感染を 防ぐため、出穂直前の防除は必ず行ってくださ

      い。

 

 紋枯病……穂ばらみ期の発生株率が、早生では 10%以上、中生では 20%以上 ならば防除が必要です。

 

この夏農作業中の熱中症での死亡者が全国で急増しています。 こまめな水分補給を!

 

米は地力でとれ! 土づくりで貯金の一部を蓄えましょう! 

転作のローテーションなどの影響で、地力が年々著しく低下してきています。 さらに、近年は異常気象の影響もあり、お米の品質や食味の低下が見られるよう になっています。これからの安定した品質と収量のためにも、できるだけ早い段 階から「土づくり」に取り組みましょう。

 

 ① 土壌改良資材・有機物の施用・・・圃場の乾田化による地力の低下対策を 行う 

 

 ② 10 月中旬までに秋起こし・・・稲わらの腐熟の促進を図る

 

 ③ 深耕・・・作土深 15 ㎝以上を確保(根を深く張らせることで、高温に強く する) 

 

次回は収穫後、本年度の結果をもとに振り返ります。