令和2年度おいしい福井県米を作るために!-第3回-

営農ニュース

坂井農場長からの営農アドバイス

坂井基幹支店には、120年超の歴史を持つ試験栽培の圃場「坂井農場」があります。坂井農場で栽培している水稲の生育について長谷川農場長がアドバイスいたします。3回シリーズの最終回の3回目は本年度の生育結果を公開します。

 

――令和2年度の稲作を振りかえって――

  1 令和2年度の月別気象と生育概要

  2 令和2年産の全国、福井、坂井管内の作柄等

  3 本年度の稲作の特徴

  4 坂井農場の気象対策試験(2020年)

  5 令和3年度(2021年)に向けた取り組み

1 令和2年度の月別気象と生育概要 1/3

○4月(育苗期)……全体的に平均気温かなり低く、日照時間は平年並み

4月の平均気温(11.2度)は、平年(12.9度)よりかなり低く、日照時間(105%)は平年並み、降水量(134%)は多かったようです。特に4月下旬の気温は、平年と比べ3.1度低く、直播の出芽はやや遅くなりました。

苗の生育をみると、苗丈は短く、充実度も高く良好でした。

 

○5月 (移植期~分げつ期) ……気温高く、日照時間平年並み

5月は高気圧に覆われ晴れた日が多く、平均気温(18.7度)は平年(17.7度)より高い、日照時間(96%)は平年並み、降水量(56%)は少なくなりました。

・天候にも恵まれ、田植え作業は順調に行われました。

・昨年大発生した藻は、やや少ない傾向でしたが、湧きの発生は例年同様多くありました。

 

5月末段階で、コシヒカリの生育は、平年に比べ全体的に葉色は淡く、草丈短く茎数もやや少なかったようです。

撮影日 5月

撮影日 5月

1 令和2年度の月別気象と生育概要 2/3

○6月 (有効分げつ期)……気温かなり高く、日照時間・降水量かなり多い

6月の平均気温(23.5度)は平年(21.6度)を大きく上回り、日照時間(137%)もかなり多めでした。降水量も6月14日を中心に大雨となり、平年と比べ179%とかなり多く降りました。

・ハナエチゼンの幼穂形成期は6月24日で、平年より3日早くなりました。

・梅雨入りは平年に比べ1日遅い6月11日でした。

・雑草地でのカメムシの発生が平年の3倍と多く確認されたことから、6月30日に斑点米カメムシ類の注意報が発表されました。

 

6月下旬の生育状況をみると、いずれの品種も草丈は平年に比べやや長く、茎数は平年並みからやや少な目、あきさかりは多く生長しました。

 

○7月 (分げつ期~幼穂形成期・出穂期)……気温低く、日照時間かなり少なく、降水量は多め   

7月は、全体的に低温・寡照・多雨でした。平均気温(24.5度)は平年(25.6度)より低く、日照時間(41%)はかなり少なかったようです。降水量は、平年と比べ169%と多くなりました。

 

ハナエチゼンの出穂期は、7月16日で平年に比べ2日早く、低温寡照の影響によりコシヒカリの幼穂形成期は7月12日で平年に比べ2日、あきさかりは7月17日と3日遅れました。7月中旬のコシヒカリの草丈・茎数はほぼ平年並みでした。

撮影日 7月

撮影日 7月

1 令和2年度の月別気象と生育概要 3/3

○8月 (出穂期~登熟期)……梅雨明けは遅く、日照時間も多く猛暑日続く

梅雨明けは、平年より8日遅い8月1日。8月は、太平洋高気圧の勢力が強く好天が続いたため、福井の月平均気温は、29.0度と過去3度目の高さとなり、猛暑日は12日と、平年(3.8日)を大きく上回りました。

・高温が続き、斑点米カメムシの発生も多いことから、8月20日に胴割米・斑点米注意報を発表。

 

ハナエチゼンの収穫は、8月20日頃から始まり順調に進みました。成熟期のコシヒカリの稈長は長く、とりわけ第5、4節間の伸びが著しく、一部の地域でニカメイチュウ等の被害が顕在化。これらの影響を受け、コシヒカリの倒伏が目立ちました。

コシヒカリ・あきさかりの出穂期は曇天等の影響により、平年に比べ3日程度遅れました。

 

○9月上中旬(成熟期)……気温高く、雨の日も続く

9月上旬の平均気温かなり高く、高気圧に覆われ晴れた日が多い月でした。中旬は、前線や湿った空気の影響で雨や曇りの日が続き、コシヒカリで倒伏が進み、収穫に支障がみられました。あきさかりも穂数・総籾数多く、例年に比べやや倒伏しましたが、いちほまれ、あきさかりの収穫は、比較的順調に進みました。

撮影日 8月

撮影日 8月

2 令和2年産の全国、福井、坂井管内の作柄等 1/2

―北海道・東北高く、西日本が低い東高西低―

2020年11月1日公表された全国の作柄は、531㎏/10aでほぼ前年並み、作況指数99で平年並み。

 

●地域別の作況指数

北海道106 良

東北 104 北陸102のやや良

関東 101 平年並み

東海95、近畿・四国96 やや不良

中国92、九州85 不良

東高西低という結果になりました。

 

●県別の作況指数と理由

北海道(106)、岩手・秋田(105)が高く、山口(73)、大分(77)、福岡(80)が低くなりました。

これには、次のような理由が考えられます。

・北海道、東北および北陸においては、全籾数が確保され、登熟も順調に確保されたこと

・東海以西においては、トビイロウンカの被害、登熟期の日照不足等により登熟が不良となったこと

・九州では台風の影響もあり平年を大きく下回りました。

 

●全国の一等米比率

全国の10月31日現在の1等米比率は80.8%(昨年72.9%)と昨年同期を7.9%上回りました。

主な格落ち理由は、形質(乳白等)、着色粒です。

 

しかし、本県では、全国を上回っているものの昨年とほぼ同様で、主な格落ち理由は、斑点米や胴割粒等となっています。

 

●北陸の一等米比率

北陸4県の1等比率は78.8%

県別では新潟県73.2%、富山県89.3%、石川県87.4%、福井県85.3%

県別の格落ち理由は、新潟は整粒不足、富山・石川・福井は着色粒(斑点米)が最多となりました。

 

●北陸の作柄

北陸の作柄は、531㎏/10a、102とやや良

県別作況指数は、

新潟(542㎏)・富山(535㎏)103 やや良

石川(515㎏) 101

福井(482㎏)99 平年並み

 

北陸農政局の調査によると、

穂数→平年並み

1穂籾数→やや多く

全籾数→平年並み

登熟→やや不良(9月上中旬の降雨による倒伏と日照不足)

ふるい1.90㎜ベースで、収量は482㎏/10a、作況指数99

2 令和2年産の全国、福井、坂井管内の作柄等 2/2

●坂井管内の作柄

坂井管内の作柄をみると、個人差が大きくニカメイチュウ等の被害が顕在化した地域では、収量の低下が激しく見られました。

全体的には早生のハナエチゼンがやや低く、中晩生のコシヒカリ、あきさかりは、一定の収量を確保しました。いちほまれは、全体的には前年をやや上回ったが、個人差が大きかったようです。

 

●県・坂井地域の主要品種の品質

福井県全体の1等米比率(10月31日時点)は、85.3%(昨年85.2)でほぼ昨年同様でした。しかし8月の猛暑等の影響により、いずれの品種も品質は昨年を下回り、坂井地域も昨年度をやや下回りました。

 

10月31日現在での主要品種の等級割合   経済連   (昨年)

品種1等比率(坂井)1等比率(県全体)
ハナエチゼン95(97)90(95)
コシヒカリ95(96)88(95)
あきさかり95(95)90(93)
いちほまれ92(94)95(96)

 

福井県全体の品種別格落理由

ハナエチゼン、あきさかり……カメムシの被害、次に胴割れが目立った。

コシヒカリ……乳白、カメムシ

いちほまれ……胴割れ

 

坂井地域の品種別格落理由

ハナエチゼン、あきさかり……カメムシ

コシヒカリ、いちほまれ……胴割れ

 

県全体の主要品種の格落理由割合 (昨年)

ハナエチゼン 斑点米71%、胴割れ21%      (斑点米75%、未熟10%)

コシヒカリ  乳白40%、斑点米30%、未熟15%  (乳白36%、胴割れ25%、斑点米23%) 

あきさかり  斑点米77%、胴割れ16%     (斑点米67%、胴割れ17%)

いちほまれ  胴割れ50%、斑点米39%     (胴割れ38%、斑点米35%)

 

坂井地域の主要品種の格落理由割合【1等→2等以下】(県全体)

品種胴割れ乳白未熟カメムシその他
ハナエチゼン15(21)3(1)3(5)66(71)14(3)
コシヒカリ44(10)6(40)9(15)29(30)12(5)
あきさかり26(16)0(3)1(4)73(76)0(1)
いちほまれ91(50)0(10)0(1)9(39)0(0)

3 本年の稲作の特徴

① 気象と水稲の生育概要

4月は平均気温かなり低く、5月以降は高温傾向で6月は特に高温となりました。分げつ数はやや少な目に、草丈はやや短めに推移。6月下旬までの生育はやや早めに、その後の長梅雨の影響により生育はやや遅れ気味となりました。農場のハナエチゼンの出穂期は、平年より2日早く、コシヒカリ・あきさかりは3日程度遅れました。

 

7月の寡少・多雨の影響等により軟弱徒長し、中生以降のコシヒカリ・あきさかりでは、強い風雨がないにも関わらず、倒伏が目立ちました。

病害虫関係では、ニカメイチュウ、カメムシによる被害があり、収量・品質に大きな影響を与えました。全国的には、ウンカの被害も目立ちました。

 

品種別収量を全体的にみると、早生ハナエチゼンがやや低く中晩生のコシヒカリ、あきさかりは比較的安定していました。主な格落ち理由は、斑点米や胴割粒の発生によるものでした。

 

② 前年より発生の多いニカメイチュウ

発生要因

前年の第2世代の発生は平年より少ないものの、冬期間の積雪日数は5日(平年52日)と短く、越冬に好適条件でした。一部の地域では、効果の低い箱剤施薬や無施用であったため原因とも考えられます。

これらのことから、第一世代の発生量は平年より少ないものの、前年より多い状態でした。7月の気温が低く、発育に好適となり第2世代の発生量は、平年・前年より増加しました。

 

対策

・ニカメイチュウの密度低下……幼虫の越冬場所である刈り株や稲わらを埋没・腐熟させ越冬量を減らす

・冬季湛水の実施

・防除の徹底……効果の高い箱剤の施用し第一世代の被害を減らす

 

 

③ 依然として多い斑点米の発生

発生要因

6月下旬から7月上旬の早生のすくい取り調査において、斑点米カメムシの水田周辺雑草地での生息密度は、平年より増加しました。冬期間の気温は、平年より高く、カメムシ類の越冬に好適だったためです。特にクモヘリカメムシの越冬量は増加しました。ハナエチゼンの出穂期における水田内の発生は、アカスジカスミカメ、クモヘリカメムシでした。

 

斑点米の発生は、ハナエチゼンの他、あきさかり、コシヒカリなどの中晩生品種でも見られました。斑点米の多くは、カスミカメ類やクモヘリカメムシの加害です。多発要因としてはホタルイ、ヒエ等の雑草が多い圃場で平坦部でも増加し、カメムシ類の水田内への侵入、定着を増長し加害を増大させていました。

 

8月~9月の気温が高く、アカスジカスミカメは、第4世代の発生がみられ、加害期間が長期化。9月の高温により、中晩生品種でクモヘリカメムシが集中的に多発生しました。カスミカメムシ類やクモヘリカメムシによる頂部加害粒は、色彩選別機でも除去しにくかったようです。また、クモへりカメムシは集合フェロモンを出すため、局部多発する圃場がありました。

 

対策

・カメムシの密度低下……水田周辺の雑草防除および麦跡そば播種までの耕耘の徹底

・防除の徹底……基幹防除の徹底と仕上げ防除の実施(クモヘリカメムシ対策)

 

 

④コシヒカリ等の倒伏

発生要因

本年は12年ぶりに、台風の上陸がない年でしたが、コシヒカリを中心に倒伏が目立ちました。稲は多肥や日照不足等により、節間が伸びているところに風雨など外的な力が加わると倒伏します。特にコシヒカリは穂が重く稈長が長いと倒伏する品種です。コシヒカリの7月上旬の草丈は、ほぼ平年並み、その後成熟期の稈長は昨年・平年に比べ長くなったこと、7月の日照不足や長梅雨の影響による中干しの不徹底により、幼穂形成期以降、稈長が伸びたこと、ニカメイチュウの被害や過剰分げつにより茎が弱くなった圃場では倒伏が進行しました。

 

対策

・中干しによる生育中期の窒素供給の制限

・ニカメイチュウ、紋枯病等の病害虫の適期防除

・適切な生育診断による倒伏予測

 

参考 コシヒカリの(節間長・葉身長調査)―2株平均

 年次節間長(㎝)
 1 2 3 4 5 計
 元年38.4 18.8 15.2 17.0 2.3  85.2
2年  37.020.5 17.0 11.0 4.5 90.0 
病害虫対策が重要です。

病害虫対策が重要です。

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2020年) 1/5

坂井農場の結果

気象対策試験の収量

ハナエチゼン60.6㎏/a(平年56.6)、

コシヒカリ61.2㎏/a(平年53.3)、

直播コシヒカリ55.6㎏/a(平年41.8)、

あきさかり70.0㎏/a(平年64.4)

いずれも平年を上回りました。

昨年と比較すると、早生のハナエチゼンは、昨年を下回り、出穂の遅い中晩生のコシヒカリ、あきさかりは昨年を上回りました。

 

本年の生育の特徴としては、ハナエチゼンの幼穂形成期・出穂期は3日程度早まり、コシヒカリ・あきさかりは3日程度遅れたこと。また、コシヒカリ・あきさかりについては幼穂形成期以降の草丈が伸び倒伏が目立ちました。

 

品種別収量構成要素についてみると、コシヒカリ・あきさかりの総籾数は平年より多く、ハナエチゼンはほぼ平年並み。登熟は総籾数の多かったあきさかりは平年を下回りました。

 

外観品質{静岡製機(ES1000)}の良質粒率は、全体的にみると移植栽培では出穂後の高温等の影響により、平年を下回りましたが、ハナエチゼンは74%(昨年73%)と高温登熟性を発揮したといえます。食味値は、いずれの品種もタンパク含有率が高く、平年値を大きく下回りました。

 

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2020年) 2/5

品種毎の特徴(ハナエチゼン)

ハナエチゼンは、高温登熟性が高く、刈遅れによる胴割れや品質低下が少ない品種です。また、歩留まり良く、精米白度も高い品種である。良質食味で、関西地区では新米として単品アイテムの取り扱いも多く人気が高い。福井県をはじめ9県(銘柄品種)で栽培されています。

 

草丈は生育全体を通しやや長く推移しました。茎数は、生育前半はやや多くその後やや少な目に推移した。幼穂形成期・出穂期は平年より3日程度早回りましたが、葉色は、全体的に淡く推移し、出穂期のSPAD値も昨年に比べやや低くなりました。

 

成熟期の稈長はやや長く、穂数はほぼ平年並みに。移植ハナエチゼンの収量は60.6㎏/aと平年を上回ったが昨年より低下しました。収量構成要素からみると、総籾数は301百粒/㎡(平年比101%)と平年並み、登熟がやや良。品質をみると、外観形質は、未熟粒多く良質粒率74%と平年(73%)並み、食味成分はタンパク含量高く、食味値もかなり低くなりました。

 

移植ハナエチゼン(㎏/a)

区分わら重籾重粗玄米重屑米重精玄米重
元年59.488.271.56.265.3
2年61.183.968.17.560.6
平年59.179.463.97.356.6

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2020年) 3/5

品種毎の特徴(コシヒカリ)

コシヒカリは、全国43府県で栽培され、全国検査数量の約30%を占める本県が育成した日本の代表品種です。倒伏やイモチ病に弱い品種であるが食味良好であることから、各県で栽培技術の改良に取り組み全国に普及しました。本県では、登熟期の高温を避けるため、平成22年度から5月15日以降の適期田植えに取り組んでいます。

 

草丈は生育前半にやや短め、茎数はやや少なく、その後生育旺盛となり、幼穂形成期時点には、草丈・茎数ともにほぼ平年並みでした。幼穂形成期・出穂期は、平年に比べ3日程度遅れました。成熟期の稈長は平年に比べやや長く、穂数はほぼ同様に。昨年比べ下位節間が長く倒伏が進みました。

 

移植の収量は61.2㎏/aと高く、収量構成要素からみると、総籾数・登熟歩合が平年よりやや高くなりました。品質面では、外観形質は、良質粒率64%で平年より低くなりました。登熟期の高温や収穫直前でのフェーン現象や刈り遅れの影響により、胴割粒の発生が目立ったことが良質粒低下の要因になりました。

 

移植コシヒカリ(㎏/a)

区分わら重籾重粗玄米重屑米重精玄米重
元年66.675.660.66.154.5
2年65.982.869.28.061.2
平年67.974.760.26.953.3

直播コシヒカリの草丈・茎数は生育全体を通じ短く、少な目に推移しました。幼穂形成期・出穂期は平年に比べ3日程度遅くなりました。成熟期の稲体をみると、稈長はかなり長く・穂数は平年並みです。

直播の収量は55.6㎏/aで平年をかなり上回り、収量構成要素からみると、平年に比べ総籾数が多く登熟が良好でした。

 

直播コシヒカリ(㎏/a)

区分わら重籾重粗玄米重屑米重精玄米重
元年63.665.452.29.942.3
2年72.379.564.18.555.6
平年70.166.252.811.041.8

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2020年) 4/5

品種毎の特徴(あきさかり)

あきさかりの食味はコシヒカリと同等で高温登熟性をもつ収量性の高い品種です。業務用に人気が高く、ハナエチゼン並みの価格で、関西では単品販売も行われています。本県をはじめ6県で栽培されています。

 

草丈は、6月中旬は長く推移したが全体的には短めに、茎数は生育前半から多目に推移しました。幼穂形成期・出穂期は平年に比べ3日程度遅くなりました。成熟期の稲体は、稈長はほぼ平年並み、穂数はかなり多くなりました。収量は70.0㎏/aと平年を上回りました。収量構成要素では、総籾数(平年比104%)多く登熟がやや不良となり、品質では、良質粒率70%でやや低くなりました。

 

移植あきさかり(㎏/a)

区分わら重籾重粗玄米重屑米重精玄米重
元年80.989.172.65.167.5
2年82.698.880.210.270.0
平年82.388.272.07.664.4

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2020年) 5/5

品種毎の特徴(いちほまれ)

いちほまれは、ポストこしひかりを目指し育成されたブランド品種です。昨年度は北陸地域で唯一の特A品種で、コシヒカリより稈長短く倒伏やいもち病に強い品種です。昨年度より県下全域で栽培され日本一おいしいコメを目指しています。

 

草丈は、幼穂形成期までは前年とほぼ同様に推移しましたが、その後節間が伸びました。茎数は生育前半から少な目に推移、前年に比べ幼穂形成期はやや早く・出穂期はやや遅くなりました。成熟期の稲体は、前年と比べ稈長は長く前年並み、穂数は少なかったです。収量は66.3㎏/aと前年67.7㎏/aを下回りました。収量構成要素では、総籾数(前年比106%)多く登熟がやや不良、品質では、良質粒率66%で前年に比べやや低くなりました。

 

移植いちほまれ(㎏/a)

区分わら重籾重粗玄米重屑米重精玄米重
元年81.981.670.02.367.7
2年61.085.570.03.966.3

5 坂井農場取り組み

 坂井農場では、気象対策試験のほか1.2haの圃場でいろんな試験を行いました。

・気象変動等に対応したハナエチゼン・コシヒカリ・あきさかりの新肥料試験

・いちほまれの新肥料試験

・土壌改良資材試験

・箱施薬、除草剤等の試験

・高密度播種苗移植栽培試験や地温・地温の測定など

これらについては、実績書で報告いたします。

溶出試験

溶出試験

6 令和3年度に向けた取り組み

過去7年間の稲作期間(成熟期)の気象は

25年度は8月下旬から9月中旬の大雨

26年度は8月の日照不足

27年度は8月中旬から9月の低温・日照不足など異常気象が続く

28年度は台風や秋雨前線の影響も少なく稲作期間全体にわたり日照時間に恵まれる

29年度は6月の低温、8月中旬以降の曇天、日照不足など不順な気象

30年度は7月の酷暑、少雨、8月下旬以降の相次ぐ台風、低日照

令和元年度は出穂後の異常高温やその後の低温

令和2年度は、7月の低温・寡照やその後の高温など不順な天候が常態化。ニカメイチュウや本県には直接的な被害がなかったものの西日本を中心としたウンカの大発生など予測しえない事態が発生しています。

 

今後は、暖冬の影響による越冬害虫の生息密度の増加が懸念されるでしょう。本年は、長梅雨による緩慢な葉色の低下や節間の伸長による倒伏が一部の圃場でみられましたが、初期生育の確保の併せ、今後とも、生育期間を通して適切な栽培管理を適切に行うことがこれまで以上に重要となってきます。

 

登熟期の高温の常態化を見越したコンパクトな稲体づくりと後期栄養確保のための水管理や施肥管理、病害虫防除や土づくりなどを確実に実施することです。

 

ポイント1

初期生育の確保

田干しの励行による湧き、藻の発生防止等による初期生育の確保

適正な中干しの励行による過剰生育の防止

 

ポイント2

ニカメイチュウ対策

冬期湛水と箱施薬の徹底

 

斑点米対策

水田周辺や麦跡の雑草管理の徹底を図り、カメムシの生息密度の低下

8月中旬の斑点米カメムシの発生状況を確認し、仕上げ防除の実施

 

ポイント3

登熟向上対策

生育量・葉色に応じた追肥・穂肥の施用

ケイ酸、リン酸、カリ等の土づくり資材の施用と深耕による根域の拡大

収穫間際まで足跡に水が残るような水管理