令和 6 年度愛される福井県米を作ろう!-第 3 回(最終回)-

3 本年の稲作の特徴
① 気象と水稲の生育概要
・4月の平均気温は平年より非常に高く、高温により一部でヤケ苗が発生しました。
・5月に強風が発生し、強風直前に移植した品種では植え痛みが発生しました。また、5月下旬から6月初旬にかけて寒暖差が激しい天候になり、また雨による深水により多くの品種で初期生育が停滞しました。6月上中旬の高温多日射により、生育は急速に回復しましたが、その後、断続的な降雨が続いたため、中干しが充分にできず、茎数過剰となった圃場もあり最終的な籾数過剰につながりました。
・6月の気温が高かったことから、ハナエチゼンの幼穂形成期は平年より1~3日早まり、出穂期も平年より3~4日早いところが多く、出穂盛期は早い地域で7月11日頃、県全体としては7月13~16日となりました。コシヒカリ及びいちほまれの幼穂形成期・出穂期は平年並みで、中生以降の品種の幼穂形成期頃が高温寡照であったことから、下位節間長が伸長し草丈が伸びました。また斑点米カメムシ類が多い傾向であったため、7月9日に注意報を発令されました。
・出穂期以降は高温の影響で、ハナエチゼンの収穫は早いところで8月13日頃と平年に比べて早く、収穫盛期は19~20日となり、5月中旬移植のコシヒカリの収穫は早いところで9月2日、盛期は4~8日となりました。コシヒカリでは、草丈長く、籾数過剰の圃場で倒伏が発生しました。
・福井県の作況は102と「やや良」となりました。早生品種では多収でしたが、中生の品種で網下米が多くなりました。籾数過剰やコシヒカリでの倒伏の発生が網下米の増加に影響したと考えられます。コシヒカリでは出穂期前後に高温が続き、昨年と比較すると高温傾向は軽微であったため、乳白粒等の高温障害は平年並みの発生でした。コシヒカリでは倒伏により収穫作業が遅延した結果、それ以降収穫する品種で刈り遅れが生じ、また9月が高温であったことから胴割米が多く発生しました。
★農場長ポイント
昨年の猛暑の経験から、生産者の皆さんが水管理を見直し、きめ細かに行っていたことが功をなし、思ったほど胴割米が発生しなかったようです。圃場を常に潤し、保湿状態にしていたことがよかったのだと思われます。
ただ近年は、通水が十分にできない地域にむけて「飽水管理」という管理の仕方もあります。高温における長期間の湛水は根腐れを引き起こすため、気象にあわせて生育管理を行ってください。
※飽水管理…水田に自然に減水させ、田面に水が無くなったらかん水する水管理手法
② 初期生育不良(軟弱、生育の遅延)
発生要因
4月下旬から5月の気象について検証すると、定期的な降雨で深水が継続し、また気温高めで最大風速10m以上の日も例年より多くあり、この傾向は6月上旬まで続きました。このため初期の分げつが抑制され、軟弱ぎみの生育となりました。
〇気象データ(平年値との比較) 福井地点 (風速:春江地点)
旬 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 (時間、%) | 最大風速10m超え日数 | 備 考 | ||
4月下旬 | 18.1℃(+3.3℃) | 33.0㎜ | (71%) | 36.1 | (61%) | 0日 |
|
5月上旬 | 17.1℃(+0.2℃) | 20.5㎜ | (47%) | 70.4 | (115%) | 3日 | 強風の日多い |
5月中旬 | 18.7℃(+1.0℃) | 73.5㎜ | (134%) | 66.7 | (110%) | 3日 | 強風の日多い |
5月下旬 | 19.4℃(-0.1℃) | 112.0㎜ | (273%) | 66.8 | (97%) | 2日 | 28日大雨 |
③ 登熟期間の高温と少雨
今年の水稲の登熟期間(7月中旬~9月上旬)は、全ての品種・作型で降雨が少なく、日射量が多く、気温は常に平年より高く推移しました。このため管内全域で、積極的に入水が行われていました。特に主力のコシヒカリは出穂期前後高温となりましたが、昨年と比べ軽微であったため乳白粒等の高温障害は見られませんでした。このため穂数・籾数は多かったのですが登熟歩合が低下し、品質や収量に影響を与えたと考えられます。
〇気象データ(平年値との比較) 福井地点 (風速:春江地点)
旬 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 (時間、%) | 最大風速10m超え日数 | 備 考 | ||
6月上旬 | 21.0℃(+0.2℃) | 0.0㎜ | (23%) | 68.8 | (112%) | 1日 | |
6月中旬 | 25.3℃(+3.3℃) | 9.5㎜ | (20%) | 94.3 | (192%) | 2日 | |
6月下旬 | 24.3℃(+1.2℃) | 203.5㎜ | (247%) | 35.6 | (98%) | 0日 | 22~23大雨 22日梅雨入り |
7月上旬 | 27.0℃(+2.2℃) | 187.5㎜ | (196%) | 33.4 | (82%) | 0日 | 10日大雨 |
7月中旬 | 26.7℃(+0.9℃) | 133.0㎜ | (136%) | 40.3 | (89%) | 1日 | 12~13日大雨 |
7月下旬 | 29.4℃(+1.9℃) | 77.0㎜ | (166%) | 79.9 | (115%) | 0日 | |
8月上旬 | 28.9℃(+0.6℃) | 14.0㎜ | (43%) | 103.8 | (138%) | 0日 | 1日頃梅雨明け |
8月中旬 | 28.8℃(+1.3℃) | 1.0㎜ | (2%) | 58.7 | (92%) | 0日 | |
8月下旬 | 29.6℃(+3.0℃) | 68.5㎜ | (113%) | 75.3 | (113%) | 2日 | 春江38.8℃ 最高気温更新 |
9月上旬 | 27.6℃(+2.5℃) | 16.5㎜ | (21%) | 73.9 | (137%) | 0日 | |
9月中旬 | 29.5℃(+6.2℃) | 13.5㎜ | (17%) | 73.3 | (143%) | 0日 | 20日猛暑日最も遅い記録 |
対策
・間断通水の励行と葉色に応じた追肥の対応
・土づくりによる圃場の健全化による気象変動に左右されにくい稲作管理
④ 胴割れ・斑点米による品質低下
令和6年産米の農産物検査結果では、コシヒカリ以外のハナエチゼン等で1等比率が低下しました。全体に乳白粒の割合は減ったものの、コシヒカリ・いちほまれにおいては斑点米・胴割れ米による格落理由が目立ちました。
このため胴割れ発生のメカニズムや要件等について検証します。なお、白未熟粒等についても、出穂後20日間の平均気温が28℃以上で発生が増える傾向にあります。
【発生時期と原因】(令和3年福井県技術対策資料より抜粋)
発生 時期 | 刈取り適期時(立毛中) 〔籾水分25%頃〕 | 刈遅れ時(立毛中) 〔籾水分20%以下〕 | 乾燥時(乾燥後) |
要 因 | ・フェーンや高温 ・1穂のもみ数が増加し、成熟ムラが拡大 | ・降雨とその後の乾燥 | ・急激な乾燥 |
メカニズム | ・米粒が急激に乾燥する。 ・1穂内の米粒の水分ムラにより発生。 | ・米粒の不均一な誇張と収縮によって発生。 | ・米粒内の水分ムラが大きくなり発生。 |
【胴割が発生しやすい米になる要件と理由】
要件 | 出穂後の20日間の 平均気温が28℃以上 | 出穂後の葉色が淡い | 出穂期頃の根量が少ない (平年の80%以下) |
理由 | ・高温で米の細胞の容量が大きくなるため、もろい米質となる。 【白未熟粒などの増加】 | ・葉に蓄積されている養分が少ないため、コメへの転流が少なくなり、もろい米質となる。 ・成熟が早まり刈遅れしやすい。 | ・根の活力が登熟後半に衰えるため、成熟が早まり、刈遅れしやすい。 |
⑤ 病害虫の発生
・ニカメイチュウ・・・管内でも数年に一度大きな被害が見受けられます。今年の越冬成虫は春先から気温が高かったことから、平年前年より早く多く発生しました。6月下旬から7月は雨が多かったことにより、第一世代の繁殖、第二世代の成育に好適でなく、発生加害は少なくなりました。
対策
・ニカメイチュウの密度低下…幼虫の越冬場所である刈り株や稲わらを埋没・腐熟させ越冬量を減らす冬季湛水の実施。
・防除の徹底…ニカメイチュウに対し効果の高い箱剤を施用し、第一世代の被害を減らす。
・カメムシ類・・・6月下旬、7月上旬の水田周辺雑草地での生息密度は多く、注意喚起するため7月9日に注意報が発出されました。7月中旬の早生品種出穂期における発生量は平年よりやや少なかく、主にアカスジカスミカメだが、ホソハリカメムシ、クモヘリカメムシ等の大型種の発生も目立ちました。7月下旬には初めてイネカメムシの生息が確認されました。
斑点米の発生は早生のハナエチゼンで多く、コシヒカリ、あきさかりなどの中晩生品種でも目立ちました。上位等級比率はハナエチゼンで約92%、コシヒカリが約90%で、斑点米による格落ちは、ハナエチゼンで約78%、コシヒカリで約55%でした。(10月15日時点 )
対策
・カメムシの密度低下…水田周辺の雑草防除および麦跡圃場のそば播種までの耕耘の徹底
・防除の徹底…基幹防除の徹底と仕上げ防除の実施(クモヘリカメムシ対策)
・いもち病・・・6月5半旬に常発地での発生が見られ、その後7月1半旬に福井・坂井地区での発生が見られ、県内全域での発生は7月2半旬と平年並みでした。7月下旬の県平均発生株率はかなり少なく、8月の気温が高く推移したため進展しませんでした。
対策
・種子更新による健全種子の使用
・育苗時に苗いもちの発生が確認された場合、本田への移植を行わない
・紋枯病・・・初発期は7月1半旬と平年前年並みでした。7月5半旬には全域で発生し、茎数が多い圃場などで8月中旬まで水平進展が認められました。その後垂直進展しましたが、8月、9月の降水量がかなり少なかったため、垂直進展に不適でした。
対策
・毎年発生している圃場への紋枯病対応の箱施薬剤の活用

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2024年)
坂井農場の結果をお知らせします。
気象対策試験の収量
ハナエチゼン 77.0㎏/a(平年57.8)
コシヒカリ 52.3㎏/a(平年54.0)
直播コシヒカリ 43.4㎏/a(平年41.9)
あきさかり 56.4㎏/a(平年63.4)
ハナエチゼン、直播コシヒカリは平年を上回り、他は平年値を下回りました。
昨年と比較すると、早生ハナエチゼン以外の中晩生のコシヒカリ、直播コシヒカリ、あきさかりは昨年をやや下回り、いちほまれは47.8㎏/a(前年46.0㎏/a)で昨年をやや上回りました。
生育の特徴としては、5月1日植えのハナエチゼンでは後半草丈は伸び平年以上となり、茎数も後発の分けつ増加により有効茎が減少しました。五月半ばの田植えのコシヒカリは生育後半の生育により、あきさかりでは期間を通して平年並みとなったことにより、草丈・茎数とも平年以上を確保できましたが、直播コシヒカリ(5月8日播種)では草丈・茎数とも平年値以下となりました。これは前半の生育期間中気温は高めに推移しましたが、降雨(大雨)が多く、10m以上の強風の日も頻繁にあったことからそれぞれの生育ステージに影響を与えたと考えます。
幼穂形成期はハナエチゼン・直播コシヒカリ・あきさかりでは平年より2日遅れ、コシヒカリ移植は1日遅れました。草丈は直播コシヒカリでは平年をやや下回りましたが、その他の気象区は草丈長く、コシヒカリの倒伏程度は3.5でした。
品種別収量構成要素についてみると、一穂籾数はハナエチゼン・コシヒカリ直播でやや多く、コシヒカリ・あきさかりでは少なくなり、総籾数はハナエチゼン・コシヒカリで多く、他の区は少なくなりました。千粒重はいずれの品種も低く、登熟歩合はハナエチゼン・コシヒカリ・あきさかりで平年を下回り、直播コシヒカリでは平年・前年を上回りました。
外観品質【静岡製機(ES1000)】の良質粒率は、全ての区で平年を下回り、前年比でハナエチゼンのみ上回りました。特に昨年同様未熟粒の割合が多いのが特徴となっています。胴割粒はハナエチゼン・コシヒカリで少なく、あきさかり・直播コシヒカリで多くなりました。食味値はハナエチゼンでは平年より低く、コシヒカリ・あきさかり・直播コシヒカリはタンパク含量少なく、平年値を上回りました。
品種毎の特徴
ハナエチゼン(移植)
・草丈は生育前半やや短く、茎数も少な目に推移しましたが、6月中旬になり平年並みまで回復し、その後も草丈・茎数とも増加し続けました。幼穂形成期は平年並みとなり、出穂期は平年より1日早まりました。葉色も生育前半淡く経過し、6月後半には平年以上となりました。出穂期のSPAD値41.3は昨年・平年に比べ濃くなりました。
・成熟期の稈長は平年より長く、穂数28本は平年(24本)以上となりました。移植ハナエチゼンの収量は77.0㎏/aと平年・昨年を大きく上回り、収量構成要素からみると総籾数は35,998粒/㎡(平年比120%)と多く、登熟歩合・千粒重は平年よりやや低くなりました。
・品質をみると外観形質は良質粒率71%と平年(74%)よりやや低く、タンパク含量多く食味
値は69と低くなりました。
区分 | わら重(㎏/a) | 籾重(㎏/a) | 粗玄米重(㎏/a) | 屑米重(㎏/a) | 精玄米重(㎏/a) |
4年 | 71.4 | 81.0 | 57.5 | 8.0 | 57.5 |
5年 | 69.5 | 77.5 | 62.3 | 11.3 | 50.9 |
6年 | 85.8 | 105.3 | 85.9 | 8.9 | 77.0 |
平年 | 61.1 | 80.8 | 65.1 | 7.4 | 57.7 |
※平年値は平成26年~令和5年の平均値
コシヒカリ(移植)
草丈は生育前半やや短く、茎数少なく推移し、その後幼穂形成期には草丈・茎数ともに平年並みとなりました。幼穂形成期は7月12日で平年より2日遅れ、出穂期8月1日で平年並みとなりました。成熟期の稈長は平年に比べ長く、穂数はやや多くなりました。稈長が長かったものの下位節間は昨年同様短く、倒伏程度は3前後でした。
収量は屑米やや多く52.3㎏/aで平年をやや下回り、収量構成要素からみると総籾数は増えたものの登熟歩合は77.7%と平年より低く、千粒重も低くなりました。品質面では外観形質は良質粒率55%で平年・前年より低く、未熟・被害粒多くなりました。食味値はタンパク含量率5.6で平年を上回り、食味値84と良好でした。
区分 | わら重(㎏/a) | 籾重(㎏/a) | 粗玄米重(㎏/a) | 屑米重(㎏/a) | 精玄米重(㎏/a) |
4年 | 80.5 | 80.3 | 64.6 | 7.1 | 57.5 |
5年 | 72.6 | 71.9 | 57.4 | 3.9 | 53.5 |
6年 | 75.5 | 79.3 | 64.1 | 11.8 | 52.3 |
平年 | 72.1 | 76.7 | 61.8 | 7.8 | 54.0 |
・直播コシヒカリ
草丈・茎数は、生育全般を通して短く・少なく経過し、そのまま推移し最後まで回復できませんでした。幼穂形成期は平年に比べ2日遅く、出穂期は8月6日で平年並みとなりました。成熟期の稲体をみると稈長・穂長は平年並みで、穂数は平年より少なく倒伏も見られませんでした。
直播の収量は43.4㎏/aで、屑米多くなりましたが平年を上回りました。収量構成要素からみると、総籾数(平年比92%)は平年を下回りましたが、登熟歩合83.7%(平年値70.8%)は良好で、食味値は83で高くなりました。
区分 | わら重(㎏/a) | 籾重(㎏/a) | 粗玄米重(㎏/a) | 屑米重(㎏/a) | 精玄米重(㎏/a) |
4年 | 63.1 | 64.9 | 51.7 | 12.4 | 39.4 |
5年 | 72.0 | 63.6 | 50.6 | 4.4 | 46.2 |
6年 | 67.3 | 70.0 | 55.9 | 12.5 | 43.4 |
平年 | 68.0 | 66.7 | 53.2 | 11.5 | 41.9 |
あきさかり
生育全般を通して、草丈・茎数は平年をやや上回って推移しました。葉色についても、平年以上に濃く推移し、幼穂形成期は2日、出穂期は1日平年に比べ早くなりました。成熟期の稲体は、稈長76.7㎝(平年比106%)と長く、穂数は平年並みとなりました。収量は56.4㎏/aとなり昨年・平年を下回りました。収量構成要素では総籾数(平年比94%)少なく、登塾歩合73.9%と低く収量は低下しました。品質では良質粒率71%で平年よりやや低くなりましたが、食味値は85と高くなりました。
区分 | わら重(㎏/a) | 籾重(㎏/a) | 粗玄米重(㎏/a) | 屑米重(㎏/a) | 精玄米重(㎏/a) |
4年 | 94.2 | 87.7 | 72.1 | 4.9 | 67.1 |
5年 | 83.3 | 76.0 | 61.5 | 4.3 | 57.2 |
6年 | 71.4 | 79.2 | 64.0 | 7.6 | 56.4 |
平年 | 82.5 | 88.4 | 72.1 | 8.8 | 63.4 |
いちほまれ
草丈は前年に比べ生育全体を通じ長めに推移し、成熟期の稈長も同様の傾向でした。茎数はほぼ前年並みに推移し、7月3日に最高分げつ期を迎えましたが、最終有効茎歩合66%と低くなりました。成熟期の稲体は、稈長は昨年より長く、穂数は多く、収量47.8㎏/aで前年(46.0㎏/a)をやや上回りました。収量構成要素では、総籾数はやや多くなりましたが、登熟歩合75%(昨年86%)と低く、屑米量が多く、千粒重やや重く収量は前年をやや上回りました。品質では、良質粒率64%で前年(59%)に比べ高く、タンパク値は5.7で食味値82でした。
区分 | わら重(㎏/a) | 籾重(㎏/a) | 粗玄米重(㎏/a) | 屑米重(㎏/a) | 精玄米重(㎏/a) |
元年 | 81.9 | 81.6 | 70.0 | 2.3 | 67.7 |
2年 | 61.0 | 85.5 | 70.0 | 3.7 | 66.3 |
3年 | 74.4 | 70.4 | 57.1 | 8.5 | 48.6 |
4年 | 78.5 | 74.8 | 61.0 | 4.3 | 56.7 |
5年 | 82.5 | 63.1 | 50.0 | 4.0 | 46.0 |
6年 | 98.5 | 72.1 | 58.1 | 10.3 | 47.8 |

5 坂井農場取り組み
坂井農場では、気象対策試験のほか1.2haの圃場でいろんな試験を行いました。
・気象変動等に対応したハナエチゼン・コシヒカリ・あきさかりの新肥料試験(脱プラ)
(みどり計画認定制度に対応する環境負荷低減肥料の実証試験)
・早生新品種の試験栽培
・いちほまれの新肥料試験、直播基肥一発肥料試験
・シャインパール(輸出米)の栽培試験
・土壌改良資材試験
・箱施薬、除草剤等の試験
これらについては実績書【稲作のあゆみ】で報告いたします。
6 令和7年度(2025年)に向けた取り組み
過去10年間の稲作期間(成熟期)の気象は
平成27年度は8月中旬から9月の低温・日照不足など異常気象が続く
平成28年度は台風や秋雨前線の影響も少なく稲作期間全体にわたり日照時間に恵まれる
平成29年度は6月の低温、8月中旬以降の曇天、日照不足など不順な気象
平成30年度は7月の酷暑、少雨、8月下旬以降の相次ぐ台風、低日照
令和元年度は出穂後の異常高温やその後の低温
令和2年度は7月の低温・寡照やその後の高温
令和3年度は8月の台風からの強風、その後の低温日照不足
令和4年度は6月の記録的高温と8月の記録的な大雨・日照不足
令和5年度は8・9月の統計開始以来1位の猛暑
令和6年度は5・6月の大雨・強風等による初期生育不良、登熟期の猛暑と少雨
など不順な天候が常態化しています。
特に昨年今年と登熟期間の猛暑が続いています。県の主力品種であるあきさかり・いちほまれにおいて、登熟期間が高温であったため胴割れ米が増え、一等米比率が低下しました。この温暖化傾向はこの先も続くと言われており、今後も猛暑の年があると考えたほうが妥当かと思われます。
このため稲作では初期生育の確保と併せ、今後も生育期間を通して適切な栽培管理を行うことがこれまで以上に重要となってきます。
登熟期の高温の常態化を見越したコンパクトな稲体づくりと、後期栄養確保のための水管理や施肥管理、病害虫防除や土づくりなどを確実に実施することが益々重要と考えます。
ポイント1
初期生育の確保
・浅水管理による早めの茎数確保
・適正な中干しの励行による過剰生育の防止と有効茎の早期確保
ポイント2
ニカメイチュウ対策
・冬期湛水と箱施薬の徹底による予防対策
斑点米対策
・水田周辺や麦跡の雑草の除草を徹底し、カメムシの生息密度を低下
・斑点米カメムシの発生状況を確認し、仕上げ防除を実施
ポイント3
登熟向上対策
・間断通水の励行による登熟の向上
・台風など強風、フェーン時の深水管理
・生育量・葉色に応じた追肥・穂肥の施用(高温登熟時)
・ケイ酸、リン酸、カリ等の土づくり資材の施用と深耕による根域の拡大
・収穫間際までの通水管理
坂井営農センターには、120年超の歴史を持つ試験栽培の圃場「坂井農場」があります。坂井農場で栽培している水稲の生育について、シリーズの最終回の今回は本年度の生育結果を公開します。
――令和6年度の稲作を振りかえって
1 令和6年度の月別気象
2 令和6年産の全国、福井、坂井管内の作柄等
3 今年度の稲作の特徴
4 坂井農場の気象対策試験(2024年)
5 坂井農場の取り組み
6 令和7年度(2025年)に向けた取り組み
1 令和6年度の月別気象
●月別気象と生育
4月(育苗期)気温高く日照は多く、降水量は平年並み
高気圧に覆われて晴れた日もありましたが、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日もありました。平均気温は全ての地点で平年よりかなり高く、9地点で統計開始以降最も高くなりました。降水量は多くの地点で上旬はかなり多く、中旬はかなり少なく、下旬は平年並みとなりました。日照時間は三国、敦賀、小浜などでは平年並み、その他の地点では平年より多くなりました。
5月 (移植期~分げつ期) ―気温・日照は平年並み、降水量131%と多い
前線や低気圧、寒気の影響で曇りや雨の日が多く、12日から13日、28日は前線や湿った空気の影響で大雨となりました。平均気温は三国で平年より高く、その他の地点では平年並みとなりました。降水量は全ての地点で平年より多く、日照時間は全ての地点で平年並となりました。
6月 (有効分げつ期) ―気温高く、降水量は多く、梅雨入りやや遅れる
期間の中旬までは高気圧に覆われて晴れた日もありましたが、梅雨入り(22日頃)した下旬は前線や低気圧の影響で雨や曇りの日が多くなりました。23日には福井、美山、武生、大野、九頭竜、今庄で6月の日降水量の1位を更新しました。平均気温は、三国、春江、越廼、福井、美浜で平年よりかなり高く、その他の地点で平年より高くなりました。降水量は美山で平年よりかなり多く、三国、春江、美浜で平年並みとなり、その他の地点では平年より多くなりました。日照時間は今庄、小浜で平年より多く、その他の地点でも平年よりかなり多くなりました。このためハナエチゼン・コシヒカリ・直播コシヒカリの調査区において、草丈・茎数が平年値を下回り、葉色についても同様に淡く経過しました。ハナエチゼンの幼穂形成期は6月27日(平年比+2日)となりました。
近年発生の多かった二カメイガの捕殺は少なく、箱剤施用による一定の効果が見られました。
7月 (分げつ期~幼穂形成期・出穂期)―気温高く、日照少なく、降水量かなり多い
期間を通じて梅雨前線や低気圧の影響により雨や雲の日が多く、雷を伴った大雨の日もありました。平均気温は奥越で平年より高く、その他の地点では平年よりかなり高くなりました。降水量は平年並みから平年より多くなり、日照時間は全地点で平年並みとなりました。
幼穂形成期はコシヒカリで7月12日(+1日)、直播コシヒカリ7月18日(+2日)あきさかり7月16日(+2日)と遅れました。ハナエチゼンの出穂は7月16日(昨年14日)となり、平年に比べ1日早まりました。7月中旬のコシヒカリの草丈はやや長く、茎数は96%とほぼ平年並みとなっています。
8月 (出穂期~登熟期)-気温高く、日照多く、降水量少ない
1日ごろに北陸地方の梅雨明けとなりました。 (平年より9日遅く、昨年より11日遅い)
期間を通じて高気圧に覆われて晴れた日が多く、23日には春江で38.8℃を記録し8月の日最高気温を更新しました。平均気温はほとんどの地点で平年よりかなり高くなり、降水量は平年より少なくなり、日照時間は小浜少なく、三国・福井で多く、その他の地点では平年並みとなりました。
コシヒカリの出穂は8月1日と平年並みとなり、直播コシヒカリも平年並みの8月6日でした。あきさかりの出穂8月4日と1日早まり、幼穂形成期から出穂期の期間はいずれも早まりました。ハナエチゼンの収穫はお盆過ぎに始まり、成熟期の草丈80.1㎝(平年比109%)、茎数28.0本(117%)で平年を上回りました。
9月上中旬(成熟期)-気温かなり高く、日照はかなり多く、降水量少ない
期間を通して太平洋高気圧の勢力が強く、晴れて暑い日が多く、20日には県内8つの観測地点で猛暑日の最も遅い観測記録を更新しました。平均気温は全ての地区でかなり高くなり、9月の月平均気温も更新しました。降水量は平年より少なく、日照時間はかなり多くなり、高気圧に覆われ晴れて暑い日が多く記録的な高温となりました。このため胴割れ米の発生が心配されたことから、コシヒカリ等の収穫作業は早まりました。コシヒカリ・あきさかりでは稈長が長く、コシヒカリでは倒伏が心配されましたが、下位節間の伸長が抑制され農場での倒伏は3前後でした。
2 令和6年産の全国、福井、坂井管内の作柄等
―北海道・東北高く、北陸・東海・九州が低い
2024年11月19日公表された全国の作柄(10月25日現在)は、540㎏/10a作況指数「101」で平年並みとなりました。
●地域別の作況指数
北海道・東北「103」、関東・東山「102」でやや良
近畿・中国・四国・九州「101」、北陸「99」の平年並み、 東海「98」はやや不良
●北陸の作柄(北陸農政局)
北陸の作柄は、535㎏/10a、「99」で平年並み
県別作況指数は、新潟(536㎏)「98」、富山(540㎏)・石川(521㎏)「99」
福井(531㎏)「102」でやや良
※ふるい目幅ベース、新潟・石川(1.85㎜)、富山・福井(1.90㎜)
●福井県の作柄(収量構成要素)
穂数
1穂籾数
全籾数
登熟
平年並み
やや多い
やや多い
平年並み
5月下旬以降の気温、日照が確保されたこと、7月は気温が平年を上回り、日照も確保されたことで全籾数やや多くなりました。登熟は8月以降の気温、日照が確保され平年並みとなりました。(※ふるい1.90㎜ベースで、収量は531㎏/10a、作況指数「102」)
●北陸の一等米比率
北陸4県の1等比率は82.0%(昨年37.1%)
県別では新潟県77.9%、富山県89.7%、石川県87.9%、福井県88.6%
県別の格落ち理由は、北陸4県とも整粒不足が最多となりました。
●県・坂井地域の主要品種の品質
福井県全体の10月31日段階での主要品種の1等米比率は、コシヒカリ等では出穂期以降の高温の影響もあり、全体で91.7%となっています。
主要品種の1等比率(10月31日現在) 県経済連 (昨年度)%
品種
県全体
坂 井
ハナエチゼン
92.1(93.7)
93.1(98.0)
コシヒカリ
90.2(84.5)
96.4(94.8)
あきさかり
91.8(89.1)
95.7(96.6)
いちほまれ
93.9(96.3)
95.7(98.7)
●県全体の主要品種の格落理由割合 (昨年)
ハナエチゼン: 斑点米77%、胴割れ11%、乳白9%(胴割れ39%、斑点米28%)
コシヒカリ : 斑点米53%、乳白28%、胴割れ8%(乳白63%、斑点米20%)
あきさかり : 斑点米50%、胴割れ35%、未熟8%(胴割れ31%、斑点米25%)
いちほまれ : 胴割れ45% 斑点米34%、乳白19%(胴割れ43% 斑点米26%)