坂井農場長アドバイス 令和3年度 目指せ!おいしい福井県米!-第2回-

営農ニュース

1 稲作期間の気象状況

○4月……令和3年4月の平均気温(13.0度)は、平年(12.8度)より0.2度高く、降水量平年並み(平年比114%)、日照時間はかなり多く(132%)となりました。しかし4月下旬の低気圧や前線の影響(29日は大雨)で降水量は多くなりました。

 

○5月……低気圧や前線の影響で、曇りや雨の日が多くなり、特に中旬後半から下旬にかけて大雨となった日がありました。平均気温(18.0度)は、平年(18.1度)並み、降水量(205%)とかなり多く、日照時間(平年比79%)は平年に比べ少なくなりました。

 

○6月……中旬から下旬にかけて上空の寒気等の影響で曇りや雨の日が多く、大雨となった日もあり、平年より7日遅く18日に梅雨入りしました。平均気温(22.9度)は、平年(22.0度)に比べ高く、降水量は平年並み、日照時間は(平年比120%)と多くなりました。

 

〇7月……初旬から中旬にかけて梅雨前線の影響により、雨や曇りとなり嶺北地方では激しい雨が降りました。梅雨明けは7月14日頃と見られ、以降日照は多く、気温も高く経過しました。しかし下旬にかけて、台風8号から変わった低気圧や上空寒気の影響で、嶺北では非常に激しい雨や猛烈な雨がありました。下旬の気温は平年並み、降水量は276%、日照時間は多く144%になりました。

2 坂井農場の生育状況について

○ハナエチゼン

坂井農場の4月30日植えのハナエチゼンの幼穂形成期は、6月28日で平年に比べ1日程度遅かったが、出穂期は7月16日で平年に比べやや早まっています。また、農業試験場をはじめ県下の他の地点においても、幼穂形成期はほぼ平年並みと、全県下ほぼ同様の生育経過となっています。

○コシヒカリ  

適期田植のコシヒカリは、草丈はほぼ平年並み、茎数は平年に比べやや多め目となっています。幼穂形成期は、7月14日でやや遅れ(-4日)ましたが、出穂期は8月2日でほぼ平年並みとなっています。

直播のコシヒカリは、平年に比べ草丈短く茎数少な目となっています。幼穂形成期は、7月19日でやや遅れて(-4日)います。

○あきさかり

あきさかりの草丈は、平年に比べやや長く、茎数はほぼ平年並みとなっています。幼穂形成期は7月15日でほぼ平年並みとなっています。

 

■坂井農場

コシヒカリ(5/15)、直播(5/7)、あきさかり(5/15)        

草丈㎝ 茎数(移植本/株 直播本/m)           7月14日現在

 

区分草丈平年茎数平年葉齢平年葉色平年
コシ77.776.525.922.711.211.64.03.9
直播コシ74.570.714017010.310.74.24.0
あき70.468.729.228.511.111.54.84.4

★スズメから稲をまもれ!★

 

坂井農場のハナエチゼン圃場にスズメたちがやってきました。かわいいやつらではありません、

穂を付け始めた稲を狙ってやってくる、何とも舌の肥えたやつらです。

被害を防ぐため、

・市販されたスズメ除けのワイヤーを貼る

効果なし!むしろワイヤーに捕まって穂を狙いにきました。

・CDに目を描いて圃場内に立てておく

これが効果ありました!キラキラ輝くCDと天敵を思わせる目は効果あり!

スズメの被害に遭われている方、一度お試しください。

3 今後の対策はコレ!

最近の格落ち理由についてみてみると、斑点米や胴割れ粒が多く発生しています。胴割れ粒は、外観形状や炊飯後の食味を損なうため未然に防ぐことが重要です。

このたび農業試験場で品種ごとの胴割れ粒の発生しやすい条件とその対策を整理したので紹介します。

 

ハナエチゼン……出穂後20日間の平均気温が29℃を超えると胴割れ粒が多くなります。特に水管理に留意し適期刈取に努めることが重要です。

 

コシヒカリ・あきさかり……登熟歩合が低下すると胴割れ粒が発生しやすくなります。登熟歩合は籾数が多いと低下します。このための適正なもみ数確保や水管理が重要です。

★中干し終了後の水管理、間断通水を!★

坂井農場の主要品種の幼穂形成期は、ハナエチゼン(6月28日)、コシヒカリで(7月14日)、あきさかりで(7月15日)で、7月中旬にすべての品種が幼穂形成期を迎えました。間断通水を徹底する方とそうでない方では、コメの品質・食味値に差が出ると言われています。幼穂形成期以降は間断通水を徹底しましょう。

 

ポイント① 幼穂形成期以降は、新しい根が発生しません。このため根をいかに大事にするかがポイントで、間断通水を励行し根に水分と酸素を供給します。

 

ポイント② 土壌水分が不足すると、生育後期の窒素の吸収が抑制され肥効が劣ることがあり、登熟低下につながります。

 

★対策はコレ!★

〇間断通水のやり方(湛水と落水を数日毎に繰り返す)

① 入水 → ②自然落水 → ③落水

※フェーン現象や台風などの強風が予想される場合、直前に深水管理とする。

 

〇落水期の目安(品種別)

品  種落 水 期
ハナエチゼン、コシヒカリ、イクヒカリ、カグラモチ刈取5~3日前
あきさかり、日本晴、タンチョウモチ刈取10~7日前

 

★適期に刈り取りを! 早刈り・遅刈り弊害を無くそう★

早刈の弊害

①青米などの未熟粒が多く、玄米も小さく、収量・品質が低下する。

②籾水分が高く、乾燥むらになりやすい。

遅刈りの弊害

・立毛中に胴割米や着色粒が増え、光沢が悪くなる。特に高温期の早生品種。

 

★乾燥調製のとき、気を付けること★

 特に早生品種は高温時の刈取となるので、送風温度に注意。

① 倒伏稲、干ばつ稲は二段乾燥をする。(18%で4時間以上休む)

② 仕上げ水分15.0~15.5%まで

 

★斑点米カメムシ類への防除対策を徹底!★

・穂揃期と糊熟初期の2回防除を徹底する。

・山沿いの水田ではクモヘリカメムシの発生が多く、8月下旬まで発生が続くので、発生が多い場合は追加防除を行う。

 

主な斑点米カメムシの特徴

区分アカスジカスミカメクモヘリカメムシ
体長4~5ミリ程度15~17㎜
越冬場所畦畔など水田周辺地の雑草山林のスギなどの葉
越冬の形態成虫
年間の発生5月中旬から30日サイクルで3世代6月下旬と8月上旬の2世代
成虫の寿命7~10日30日
その他高温年は4世代発生し中晩生品種にも対策が必要他のカメムシより発生時期が遅く、8月9月に増加

★ニカメイチュウにも注意★

農場長の自己管理の圃場で捕れたニカメイチュウです。成長著しい虫です。

★いもち病・紋枯病等にも注意が必要です★

7月上旬は雨が多く、葉いもち病が発生しやすい状況でした。今後は、暑い夏が予想されています。前年、紋枯病が発生した水田では、菌核が残っており本年の伝染源となります。冷夏の時は、いもち、暑い夏の特は紋枯病に特に注意です。

 

いもち……葉いもちが発生している圃場では、葉いもち病斑から穂への感染を防ぐため、出穂直前の防除は必ず行ってください。

 

紋枯病……穂ばらみ期の発生株率が、早生では10%以上、中生では20%以上ならば防除が必要です。

★米は地力でとれ!★

転作ローテーションもあり、地力の低下が年々著しくなっています。また、近年は異常気象が発生し、コメの品質・食味低下につながっています。早めに「土づくり」に取り組み、品質向上に努めましょう。

① 土壌改良資材・有機物の施用・・・圃場の乾田化による地力の低下対策を行う

② 10月中旬までに秋起こし・・・稲わらの腐熟の促進を図る

③ 深耕・・・・作土深15㎝以上を確保(根を深く張らせることで、高温に強くする。)

 

次回は収穫後、本年度の結果をもとに振り返ります。