坂井農場長アドバイス 令和3年産おいしい福井県米を作るために!-第3回-

営農ニュース

目次

――令和3年度の稲作を振りかえって

1 令和3年度の月別気象と生育概要

・月別気象と生育

・坂井農場の生育状況(ハナエチゼン、コシヒカリ)について

2 令和3年産の全国、福井、坂井管内の作柄等

・地域別の作況指数

・県別の作況指数と理由

・北陸の一等米比率

・北陸の作柄(北陸農政局の調査)

・坂井管内の作柄

・県・坂井地域の主要品種の品質

・県全体の主要品種の格落理由割合(昨年)

3 今年度の稲作の特徴

①気象と水稲の生育概要

②初期生育不良(分げつ・生育の遅延)

③病害虫の発生・・・全体的には軽微

④褐変籾の発生( 出穂期の台風9号による暴風雨)

⑤登熟期間の日照不足

⑥コシヒカリの倒伏診断について(参考)

4 坂井農場の気象対策試験(2021年)

5 坂井農場の取り組み

6 令和4年度に向けた取り組み

1.令和3年度の月別気象と生育概要

●月別気象と生育

○4月(育苗期)……気温は上旬高く下旬は低く、日照時間132%と多い

4月の平均気温(13.0度)は、平年(12.8度)より0.2度高く、降水量は平年並み(平年比114%)、日照時間(平年比132%)はかなり多くなりました。

しかし4月下旬は低気圧や前線の影響(29日は大雨)で降水量(162%)は多くなり、日照時間(131%)もかなり多かったことにより、一部苗が焼ける被害が散見されました。

 

○5月(移植期~分げつ期)……気温平年並み、日照時間79%と少ない

低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多くなり、特に中旬後半から下旬にかけて大雨となった日がありました。平均気温(18.0度)は、平年(18.1度)並み、降水量(205%)はかなり多く、日照時間(79%)は平年に比べ少なくなりました。五月中旬以降毎日のように雨模様が続き、稲姿は草丈・茎数は小さく、コシヒカリでは平年に比べ草丈短く、特に茎数(平年約50%)が少なくなりました。

○6月(有効分げつ期)……日照時間が多く気温も高く、降水量は平年並み

中旬から下旬にかけて上空の寒気等の影響で曇りや雨の日が多く、大雨となった日もあり、平年より2日遅く18日に梅雨入りしました。平均気温(22.9度)は、平年(22.0度)に比べ高く、降水量は平年並み、日照時間(平年比120%)は多くなりました。

6月下旬の生育状況をみると、天候の回復によりハナエチゼンでは茎数が平年の約8割まで回復し、その他の品種も草丈は平年に比べやや短いものの、茎数は平年並みからやや多く確保できました。

初旬を中心に昨年発生の多かった二カメイガの捕殺が多く、今後の発生が危惧されました。

〇7月(分げつ期~幼穂形成期・出穂期)……気温並み~やや高く、日照時間-降水量も多い

初旬から中旬にかけて梅雨前線の影響により、雨や曇りとなり嶺北地方では激しい雨のところがありました。上旬の平均気温は平年並み、降水量多く日照時間はかなり少なくなりました。梅雨明けは7月14日頃と見られ、以降日照は多く、気温も高く経過しました。 

しかし下旬にかけて、台風8号から変わった低気圧や上空寒気の影響で、嶺北では猛烈な雨の所がありました。下旬の気温は平年並み、降水量(276%)日照時間(144%)は多くなりました。

幼穂形成期は上旬の寡照の影響により、

コシヒカリ 7月14日(平年値+4日)

直播コシヒカリ 7月18日(+3日)

あきさかり 7月15日(+1日)

と遅れました。

 ハナエチゼンの出穂は7月16日(昨年同日)と逆に平年に比べ2日早まり、7月中旬のコシヒカリの草丈は平年並み、茎数は114%と多くなりました。

〇8月(出穂期~登熟期)……中旬に大荒れ、その後気温高くなるが日照時間は少ない

今期間は晴れの日もありましたが、上中旬に台風9号から変わった低気圧や停滞した前線の影響により、嶺北を中心に大雨となりました。気温は26.9度と低く、降水量は341mm(平年比226%)とかなり多く、日照時間(平年比73%)は少なくなりました。

特にコシヒカリ等の出穂~穂ぞろい期の9日~10日の強風・大雨によって、海岸に近い平野部などで褐変籾の被害が多発しました。

 ハナエチゼンの収穫は、8月20日頃から始まり、成熟期の草丈は72.9㎝(平年比100%)で平年並み、茎数は21.9本(94%)で少なくなりました。

 

〇9月上中旬(成熟期)……平均気温・降水量・日照平年並み

上旬の1日~2日にかけて嶺北を中心に激しい雨があり、この期間曇りがちの日が多く気温は低く経過しました。下旬は台風14号や前線の影響で曇りや雨となった日がありましたが、晴れの日もあり気温や日照時間は平年並み、降水量は少なくなりました。

コシヒカリでは稈長がやや長く倒伏が心配されましたが、移植コシヒカリの倒伏程度は3で刈取に支障なく、また直播コシヒカリを含めその他の品種も倒伏は見られませんでした。

●坂井農場の生育状況(ハナエチゼン、コシヒカリ)について

○ハナエチゼン

坂井農場の4月30日植えのハナエチゼンの幼穂形成期は、6月28日で平年に比べ1日程度遅かったものの、出穂期は7月16日で平年に比べやや早まりました。また、農業試験場をはじめ県下の他の地点においても、幼穂形成期はほぼ平年並みと、全県下ほぼ同様の生育経過となりました。

 

○コシヒカリ

適期田植(五月半ば)のコシヒカリは、草丈はほぼ平年並み、茎数は平年に比べやや多くなりました。幼穂形成期は7月14日で遅れ(+4日)ましたが、出穂期は8月2日でほぼ平年並みとなりました。

直播コシヒカリは、平年に比べ草丈短く茎数少な目となり、幼穂形成期は7月18日でやや遅れ(+3日)ました。

2.令和3年産の全国、福井、坂井管内の作柄等

―北海道・東北高く、西日本が低い東高西低

2021年11月9日公表された全国の作柄(10月25日現在)は、539㎏/10a作況指数「101」で平年並みとなりました。

 

●地域別の作況指数

北海道「108」 良

東北「102」 やや良

北陸「97」・東海「98」 やや不良

関東・東山「101」近畿「99」四国「101」九州「99」 平年並み

東高西低という結果になりました。

●県別の作況指数と理由

北海道「108」、岩手・山形・茨城・埼玉・愛媛「103~104」と高く、

新潟「96」、山梨・長野・静岡・大分・熊本「97」が低くなりました。

これは6月以降天候に恵まれたため穂数は平年並み、籾数は7月中旬以降の好天でやや多めとなり、全籾数は平年並みとなった一方で、登熟歩合は8月上旬の台風や中旬以降の日照不足でやや不良となりました。9月中旬以降、概ね天候に恵まれ登熟が順調に推移し、四国や九州地方の作柄も向上しました。

 

●北陸の一等米比率

北陸4県の1等比率は78.8%

県別では

新潟県73.2%

富山県89.3%

石川県87.4%

福井県85.3%

県別の格落ち理由は、新潟は整粒不足、富山・石川・福井は着色粒(斑点米)が最多となりました。

●北陸の作柄(北陸農政局の調査)

北陸の作柄は、505㎏/10a、「97」とやや不良

県別作況指数は、

新潟(507㎏)「96」やや不良

富山(515㎏)「99」・石川(512㎏)「101」・福井(478㎏)「99」の平年並み

 

福井県の収量構成要素によると、

穂数→平年並み

1穂籾数→やや多く

全籾数→平年並み

登熟→やや不良(9月上中旬の降雨による倒伏と日照不足)

ふるい1.90㎜ベースで、収量は478㎏/10a、作況指数「99」

●坂井管内の作柄

坂井管内の作柄をみると、全体的には早生のハナエチゼンがやや良く、中晩生のコシヒカリ、あきさかりは、やや不良となっています。いちほまれは全体的には前年をやや下回り、個人差が大きかったようです。

 

●県・坂井地域の主要品種の品質

福井県全体の10月31日段階での主要品種の1等米比率は、8月の日照不足にもかかわらずほぼ95%以上を確保できました。

また坂井地域は、主要4品種とも県平均を上回っています。

主要品種の1等比率(11月30日現在) 経済連 (昨年度)%

品種

県全体

坂 井

ハナエチゼン

95(90)

96(95)

コシヒカリ

95(88)

99(95)

あきさかり

94(90)

95(95)

いちほまれ

97(95)

98(92)

 

●県全体の主要品種の格落理由割合(昨年)

ハナエチゼン: 斑点米76%、胴割れ10%    (斑点米71%、胴割れ21%)

コシヒカリ : 斑点米29%、未熟粒27%、乳白25%(乳白40%、斑点米30%、未熟15%)

あきさかり : 胴割れ54%、斑点米22%    (斑点米77%、胴割れ16%)

いちほまれ : 胴割れ53%、斑点米12%、乳白16%(胴割れ38%、斑点米35%)

3 本年の稲作の特徴

① 気象と水稲の生育概要

・4月下旬~5月下旬の低温、5月中旬の移植後の降雨、5月中旬~下旬の日照不足により全体に初期生育は緩慢となりました。このため各品種とも、草丈短く、茎数が少なくなりました。

・6月に入り日照も増え気温も高く推移したことにより、ハナエチゼンでは平年の茎数の8割まで回復し、他の品種についても草丈低いものの茎数が一気に回復しました。

・梅雨入りは平年より2日遅く6月18日となり、梅雨明けは9日早い7月14日となりました。8月に入ると8日・9日にかけて台風からの強風の影響により、出穂期のコシヒカリを中心に褐変籾が発生しました。更に登熟期間(8月中・下旬)の日照時間は平年比約50%しかなく、特に8月上旬に出穂した品種は登熟が進まず、網下米が増え低収となりました。

・病害虫関係では、カメムシやニカメイチュウについて目立った被害は無く、またいもち病や紋枯れ病の発生も品種によっては見られましたが、大きな被害につながりませんでした。しかし本年イネ墨黒穂病が初めて発生しました。

 

※イネ墨黒穂病…カビの一種である墨黒穂病菌の感染により稲の籾に発生する病害です。

② 初期生育不良(分げつ・生育の遅延)

発生要因

 4月下旬から6月中旬の気象について検証すると、この期間は特に降水量が多かったことと、最大風速の10m超えの日が例年に比べ多かったことが特徴です。このため日照時間も少なく、本田の水温・地温も例年に比べ低温で経過したことから、今年はこれらの要因等が影響し、初期生育(茎数・草丈)の不良につながったものと考察されます。

〇気象データ(平年値との比較)

月/旬

平均気温

降水量

日照時間

(時間、%)

最大風速10m超え日数

同左(直近3か年平均)

4月下旬

14.3℃

(-0.5℃)

63.0㎜

(162%)

81.9

(131%)

1日

1日

5月上旬

15.9℃

(-1.0℃)

63.0㎜

(146%)

54.7

(90%)

4日

0日

5月中旬

19.3℃

(+1.6℃)

123.5㎜

(225%)

38.0

(63%)

3日

2日

5月下旬

18.7℃

(-0.8℃)

99.0㎜

(241%)

58.1

(84%)

0日

0日

6月上旬

22.4℃

(+1.6℃)

50.0㎜

(218%)

83.8

(137%)

2日

0日

6月中旬

23.0℃

(+1.0℃)

64.5㎜

(136%)

35.2

(72%)

1日

0日

※観測地:福井気象台(三国)

 

 

③ 病害虫の発生・・・全体的には軽微

二カメイチュウ・・・昨年管内でも地域により発生があり、大きな被害が出ました。今年も越冬成虫が多く見られ、6月から心枯茎が確認され、その後白穂がみられたものの、箱施薬等の対応により、全体的には大きな減収となりませんでした。

対策

・ニカメイチュウの密度低下……幼虫の越冬場所である刈り株や稲わらを埋没・腐熟させ越冬量を減らす冬季湛水の実施

・防除の徹底……ニカメイチュウに対し効果の高い箱剤を施用し、第一世代の被害を減らす

 ・カメムシ類・・・冬期間の積雪日数が59日(平年48日)と長く、カメムシ類の越冬に不利な条件となりました。更に5~7月の気温は高かったものの降水量が多く、カメムシ類の生育には好適でありませんでした。7 月は雨が多く、畦畔除草や基幹防除も適期に対応出来なかったところも見受けられましたが、例年被害の 多いハナエチゼンの一等比率は96%と高くなりました。しかし斑点米はハナエチゼンの格落ち理由の83%を占めて高い水準となっています。

対策

 ・カメムシの密度低下………水田周辺の雑草防除および麦跡圃場のそば播種までの耕耘の徹底

 ・防除の徹底………基幹防除の徹底と仕上げ防除の実施(クモヘリカメムシ対策)

 

・いもち病・・・6月から7月にかけ感染好適日があったことから、箱施薬剤が入っていない圃場の一部で初発が見られ、局所的にずり込んだ圃場も確認されました。梅雨明け後一旦収まりましたが、8月にも好適日があったことから、中晩生の一部で穂いもち(枝梗、穂首)の発生がみられましたが、収量に大きな影響はありませんでした。

対策

・種子更新による健全種子の使用

・育苗時に苗いもちの発生が確認された場合、本田への移植を行わない

 

・紋枯病・・・止葉が枯れるほどの被害も散見され、収量に大きく影響した圃場もみられました。特にコシヒカリ以降の品種で、発病株率が高い圃場がみられました。

対策

・毎年発生している圃場への紋枯病対応の箱施薬剤の活用 

④ 褐変籾の発生(出穂期の台風9号による暴風雨)

 出穂直後の中晩生品種において、8月9日から10日にかけ、台風9号の影響による大雨や荒れた天気に直面しました。気象庁・三国観測所のデータからは、瞬間最大風速約30m/s、最大風速15m/sとなり、常時平均風速8m/s前後の強風が吹き褐変籾の発生につながりました。この時期コシヒカリ等では穂揃い期となり、出穂間際の籾に被害が出ました。

特に海岸に近い平野部を中心に被害が多くみられ、その後の日照不足とも相まって不稔・未熟粒の助長につながりました。

 次年度以降の対策・対応として、速やかに殺菌剤の散布が出来る体制を整える必要があると考えます。

⑤ 登熟期間の日照不足

 8月の日照時間は平年比68.9%と少なく、特に9日~31日にかけては平年比47.4%と半分以下でした。8月上旬に出穂した中晩生品種の多くは、この影響を強く受け、登熟が進まず、網下米が増え低収量の大きな要因となりました。9月に入ってもこの傾向(低温低日射量)が続き、成熟期が遅れました。

対策

・土づくりによる圃場の健全化と気象変動に左右されにくい稲作管理

⑥ コシヒカリの倒伏診断について(参考)

   コシヒカリの倒伏は稈長の長さに影響され、稈長は下位節間の長さに相関があると言われています。一般に稈長が87㎝を超えると、倒伏程度が3以上となると言われています。稈長は幼穂形成期から出穂期の日射量の影響を強く受けることが分かっており、下位節間は出穂の2週間から5日前の穂ばらみ期には伸長が終わります。 この時期の第4節間と第5節間の長さを測ることで、倒伏のしやすさを判断することが出来ます。この第4節間と第5節間の長さが14㎝以上なら倒伏しやすいと判断し、倒伏軽減剤を施用する目安となります。

下表は坂井農場の節間長を計ったもので、今年の4+5節間は12.5㎝で、倒伏程度は3前後でした(昨年15.5㎝、倒伏程度5)。

ちなみに今年7月中旬から下旬にかけて、日照時間が多く経過したことが幸いしたと考えられます。

年次

節間長(㎝)

節間長

4+5

倒伏

程度

元年

38.4

18.8

15.2

10.5

2.3

85.2

12.8

2

2年

37.0

20.5

17.0

11.0

4.5

90.0

15.5

5

3年

38.5

19.1

19.0

10.6

1.9

89.1

12.5

3

4 坂井農場の気象対策試験の概要(2021年)

坂井農場の結果をお知らせします。

気象対策試験の収量

ハナエチゼン63.2㎏/a(平年57.4)

コシヒカリ48.0㎏/a(平年53.6)

直播コシヒカリ36.3㎏/a(平年43.5)

あきさかり53.5㎏/a(平年64.8)

ハナエチゼン以外はいずれも平年を下回りました。

昨年と比較すると、早生のハナエチゼンは昨年を上回り、出穂の遅い中晩生のコシヒカリ、あきさかりは屑米が多く昨年を下回りました。

本年の生育の特徴としては、いずれの品種も初期生育が緩慢で、草丈短く茎数少なく経過し、その後6月下旬ごろから茎数は急激に増加し草丈も同様に伸びました。幼穂形成期は平年よりやや遅れ気味となりましたが、出穂期はほぼ平年並みとなりました。 

品種別収量構成要素についてみると、総籾数は平年並み~やや少なく、千粒重はいづれの品種も高く、登熟歩合はハナエチゼンは平年並み、コシヒカリ・あきさかり・いちほまれは平年・前年を下回りました。

外観品質【静岡製機(ES1000)】の良質粒率は、いずれの品種も平年を上回り、食味値は、コシヒカリ・あきさかりのタンパク含有率が高く、平年値を下回りました。

品種毎の特徴

●ハナエチゼン(移植)

草丈は生育全体を通しやや短く、茎数も生育全体を通じ少な目に推移しました。幼穂形成期はほぼ平年並み・出穂期は平年より2日早まりました。葉色は全体的に濃く推移し、出穂期のSPAD値も昨年に比べ高くなりました。

成熟期の稈長は平年並み、穂数はやや少な目になり、移植ハナエチゼンの収量は63.2㎏/aと平年・昨年を上回りましたが、収量構成要素からみると、総籾数は279百粒/㎡(平年比94%)と少な目、登熟は平年並みで千粒重は高くなりました。

品質をみると外観形質は良質粒率77%と平年(73%)より高く、食味値はやや低くなりました。

(㎏/a)

区分

わら重

籾重

粗玄米重

屑米重

精玄米重

2年

61.1

83.9

68.1

7.5

60.6

3年

60.6

81.2

66.1

3.0

63.2

平年

58.5

80.0

64.5

7.1

57.4

●コシヒカリ

草丈は生育前半にやや短め、茎数はやや少なく、その後生育旺盛となり幼穂形成期には草丈・茎数ともに平年を上回りました。幼穂形成期は平年に比べ4日遅れましたが、出穂期はほぼ平年並みとなりました。成熟期の稈長は平年に比べやや長く、穂数はほぼ同様となり、昨年比べ下位節間が短く倒伏程度は軽微でした。 

移植の収量は屑米重多く48.0㎏/aと低下しました。収量構成要素からみると、総籾数は平年並みとなり、登熟歩合は平年より低くなりました。品質面では、外観形質は良質粒率76%で平年より高くなりましたが、食味値はタンパク含量率高く低下しました。

 

コシヒカリ移植                                                                                                             (㎏/a)

区分

わら重

籾重

粗玄米重

屑米重

精玄米重

2年

65.96

82.8

69.2

8.0

61.2

3年

75.9

77.8

61.7

13.7

48.0

平年

67.3

75.4

61.0

7.4

53.6

直播コシヒカリの草丈・茎数は生育中期ごろまでは短く少な目に推移しましたが、移植と同様6月下旬ごろから茎数は著しく増加しました。幼穂形成期は平年に比べ遅く、出穂期はほぼ平年並み。成熟期の稲体をみると、稈長はやや長く穂数は平年並みでした。

収量は36.3㎏/aで、屑米が多く平年を大きく下回りました。収量構成要素からみると、総籾数(平年比101%)は平年並みとなったものの登熟(88%)は不良でした。

 

コシヒカリ(直播)                                                                                                        (㎏/a)

区分

わら重

籾重

粗玄米重

屑米重

精玄米重

2年

72.3

79.5

64.1

8.5

55.6

3年

61.8

63.8

51.1

16.5

36.3

平年

70.7

68.4

54.5

11.0

43.5

 

●あきさかり(移植)

草丈は生育全体を通じ短めに、茎数も生育前半から少な目に推移し、幼穂形成期・出穂期は平年に比べ1日程度遅くなりました。成熟期の稲体は、稈長は平年より長く、穂数はほぼ平年並みとなり、収量は屑米多く53.5㎏/aと平年を大きく下回りました。収量構成要素では、総籾数(平年比97%)やや少なく、千粒重高くなりましたが登熟が不良、品質では良質粒率75%で平年より高くなり食味値は低下しました。

 

(㎏/a)

区分

わら重

籾重

粗玄米重

屑米重

精玄米重

2年

82.6

98.8

80.2

10.2

70.0

3年

78.4

83.6

68.1

14.6

53.5

平年

81.8

89.3

72.8

7.9

64.8

 

●いちほまれ(移植)

草丈は前年に比べ生育全体を通じ短めに推移し、成熟期の稈長も同様の傾向でした。茎数は生育前半少な目に推移し、7月に入ると昨年に比べ増加しました。成熟期の稲体は、前年と比べ稈長は短く、穂数は多くなり、収量(486.6㎏/a)で前年(66.3㎏/a)を大きく下回りました。遅発分げつの増加により、屑米量が多く増加したためと考えられます。収量構成要素では、総籾数(前年比91%)と少なく、登熟(前年比 86%)も不良、品質では良質粒率73%で前年に比べ高くなりました。

(㎏/a)

区分

わら重

籾重

粗玄米重

屑米重

精玄米重

元年

81.9

81.6

70.0

2.3

67.7

2年

61.0

85.5

70.0

3.7

66.3

3年

74.4

70.4

57.1

8.5

48.6

5 坂井農場の取り組み

 坂井農場では、気象対策試験のほか1.2haの圃場でいろんな試験を行いました。

・気象変動等に対応したハナエチゼン・コシヒカリ・あきさかりの新肥料試験

・いちほまれの新肥料試験、直播基肥一発肥料試験

・土壌改良資材試験

・箱施薬、除草剤等の試験

・コシヒカリ直播カルパー減量試験など

これらについては実績書で報告いたします。

6 令和4年度に向けた取り組み

過去10年間の稲作期間(成熟期)の気象は

25年度は8月下旬から9月中旬の大雨

26年度は8月の日照不足

27年度は8月中旬から9月の低温・日照不足など異常気象が続く

28年度は台風や秋雨前線の影響も少なく稲作期間全体にわたり日照時間に恵まれる

29年度は6月の低温、8月中旬以降の曇天、日照不足など不順な気象

30年度は7月の酷暑、少雨、8月下旬以降の相次ぐ台風、低日照

令和元年度は出穂後の異常高温やその後の低温

令和2年度は7月の低温・寡照やその後の高温

令和3年度は8月の台風からの強風、その後の低温日照不足

など不順な天候が常態化しています。また病害虫関係では、本県で初めてイネ墨黒穂病が発生するなど、予測しえない事態が発生しています。

今冬は大雪との予想もありますが、暖冬の場合は越冬害虫の生息密度の増加が懸念されます。令和3年は、初期生育が低温・降雨・低日射により緩慢となり、後の生育に影響を与えました。また中晩生品種の出穂期における台風からの強風により、不稔・褐変籾の発生などもみられました。

初期生育の確保と併せ、今後とも生育期間を通して適切な栽培管理を適切に行うことがこれまで以上に重要となってきます。

登熟期の高温の常態化を見越したコンパクトな稲体づくりと、後期栄養確保のための水管理や施肥管理、病害虫防除や土づくりなどを確実に実施することが益々重要と考えます。

ポイント1

     初期生育の確保

      ・湧き、藻の発生防止のための田干しの励行による初期生育の確保

      ・適正な中干しの励行による過剰生育の防止と有効茎の早期確保

ポイント2

     ニカメイチュウ対策

      ・冬期湛水と箱施薬の徹底による予防対策

     斑点米対策

         ・水田周辺や麦跡の雑草の除草を徹底し、カメムシの生息密度を低下

         ・斑点米カメムシの発生状況を確認し、仕上げ防除を実施

ポイント3

     登熟向上対策

        ・間断通水の励行による登熟の向上

        ・生育量・葉色に応じた追肥・穂肥の施用

        ・ケイ酸、リン酸、カリ等の土づくり資材の施用と深耕による根域の拡大

      ・収穫間際までの通水管理