令和6年度愛される福井県米を作ろう!-第2回-

営農ニュース

 

JA福井県坂井営農経済センターには、120年を超える歴史を持つ「坂井農場」があります。由川農場長が水稲の生育について報告し、今後の重点管理について述べます。

 

1.稲作期間の気象状況(2024年6月~7月)

2.坂井農場の生育状況について

3.今後の対策はコレ!

・間断通水のやり方

・適期刈取(早刈りと遅刈りの弊害について)

・乾燥調製の留意点

・斑点米カメムシ類への防除対策を徹底せよ!

・ニカメイチュウの発生にも注意

・いもち病・紋枯病にも備えを

最後に 
・熱中症にご注意

・収穫後こそ地力を高めよう

 

1 稲作期間の気象概況(福井地方気象台)

〇6月……期間の中旬までは高気圧に覆われて晴れた日もありましたが、梅雨入り(22日頃)した下旬は前線や低気圧の影響で雨や曇りの日が多くなりました。23日には福井、美山、武生、大野、九頭竜、今庄で6月の日降水量の一位を更新しました。平均気温は、三国、春江、越廼、福井、美浜で平年よりかなり高く、その他の地点で平年より高くなりました。降水量は、美山で平年よりかなり多く、三国、春江、美浜で平年並みとなり、その他の地点では平年より多くなりました。日照時間は、今庄、小浜で平年より多くなり、その他の地点では平年よりかなり多くなりました。

 

〇7月上旬……上旬は低気圧や梅雨前線、温かく湿った空気が流れ込んだ影響で雨や曇りの日が多くなりました。特に1日は県内各地で、6日は嶺北地方を中心に大雨となりました。平均気温は、平年よりかなり高くなりました。降水量は、全ての地点で平年多くなり、日照時間は三国で少なく、その他の地点では平年並みとなりました。

〇7月中旬……高気圧に覆われて晴れた日もありましたが、梅雨前線や暖かく湿った空気の影響で雨や曇りの日が多く、15日はまとまった雨となりました。平均気温は、三国、今庄で平年より高く、その他の地点では平年並みとなりました。降水量は、大飯、小浜でかなり多く、三国、福井、敦賀、美浜で平年より多く、他の地点では平年並みとなり、日照時間は、勝山で平年より少なく、他の地点では平年並みとなりました。

 

2 坂井農場の生育状況について

農業試験場をはじめ県下の調査地点においては、ハナエチゼン以外の幼穂形成期はおおむね平年並みとなっていますが、坂井農場ではやや遅れています。なお葉色は全品種、やや濃く推移しています。

 

○ハナエチゼン

坂井農場の5月1日植えのハナエチゼン幼穂形成期は、6月27日で平年並みとなり、昨年と比べ2日程度遅くなり、出穂期は7月16日(昨年13日)で平年(7/17)に比べやや早まっています。

 

○コシヒカリ  

5月15日適期田植のコシヒカリは、草丈は平年よりやや高く、茎数は平年に比べやや多くなっています。幼穂形成期は、7月12日で平年に比べ2日遅れています。

 

○直播のコシヒカリ

平年に比べ草丈短く、茎数は少なくなっています。幼穂形成期は、7月20日で平年より5日遅れています。(地域、場所により格差あり)

 

○あきさかり

あきさかりの草丈は、平年に比べやや長く、茎数もやや多くなっています。幼穂形成期は7月16日でやや遅れて(+2日)います。

 

■坂井農場 (田植・播種日)

ハナエチゼン(5/1) コシヒカリ(5/15)、直播コシ(5/8)、あきさかり(5/15)

草丈㎝ 茎数(移植本/株 直播本/m)              7月10日時点

区分

草丈

平年

茎数

平年

葉色

平年

ハナエチゼン

80.9

71.8

30.2

23.8

5.2

4.8

コシヒカリ

79.6

72.4

23.6

22.1

4.6

3.8

直播コシ

60.8

74.9

22.6

29.0

5.0

3.9

あきさかり

65.9

60.8

26.8

23.9

4.8

4.1

 

3 今後の対策はコレ!

 今年も昨年同様、暑い夏が予想されていますが、猛暑の年の米の格落ち理由についてみると、斑点米や胴割れ粒が多く発生しています。胴割れ粒は、外観形状や炊飯後の食味を損なうため未然に防ぐことが重要です。

このたび農業試験場で品種ごとの胴割れ粒の発生しやすい条件とその対策を整理したので紹介します。

ハナエチゼン……出穂後20日間の平均気温が29℃を超えると胴割れ粒が多くなります。特に水管理に留意し適期刈取に努めることが重要です。

コシヒカリ・あきさかり……登熟歩合が低下すると胴割れ粒が発生しやすくなります。登熟歩合は籾数が多いと低下します。このための適正なもみ数確保や水管理が重要です。

 

★中干し終了後の水管理、間断通水を!

県下の各圃場とも、全ての品種で幼穂形成期~出穂期となっています。今後、間断通水を徹底する方とそうでない方では、コメの品質・食味値に差が出ると言われていますので、幼穂形成期以降は間断通水を徹底しましょう。

ポイント① 幼穂形成期以降は、新しい根が発生しません。このため根をいかに大事にするかがポイントで、間断通水を励行し根に水分と酸素を供給します。

ポイント② 土壌水分が不足すると、生育後期の窒素の吸収が抑制され肥効が劣ることがあり、登熟低下につながります。

 

〇間断通水のやり方(湛水と落水を数日毎に繰り返す)

入水 → 自然落水 → 入水

  ※飽水状態(溝や足跡に水が溜まっている状態)を維持することが大切。

 ※フェーン現象や台風などの強風が予想される場合、直前に深水管理とします。

 ※雨が多い場合は、入水を控え、落水に努めることが大切。

 

〇落水期の目安(品種別)

品  種

落 水 期

ハナエチゼン、コシヒカリ、いちほまれ、カグラモチなど

刈取5~3日前

あきさかり、日本晴、タンチョウモチなど

刈取10~7日前

適期刈取(早刈りと遅刈りの弊害について)

  早刈の弊害

・青米などの未熟粒が多く、玄米も小さく、収量・品質が低下する。

・籾水分が高く、乾燥むらになりやすい。

遅刈りの弊害 

・立毛中に胴割米や着色粒が増え、光沢が悪くなる。特に高温期の早生品種。

 

★乾燥調製の留意点

  特に早生品種は高温時の刈取となるので、送風温度に注意。

①    倒伏稲、干ばつ稲は二段乾燥をする。(18%で4時間以上休む)

②    仕上げ水分15.0~15.5%まで

 

★斑点米カメムシ類への防除対策を徹底!

・穂揃期と糊熟初期の2回防除を徹底すること。特に水田周縁部に多く生息しているので、畦畔も含めて防除することが大切です。

・出穂期以降の周辺の草刈りは、カメムシ類の水田内への侵入を助長するので行わないで下さい。

・麦跡雑草地では、カメムシ類が繁殖しているため、隣接の水田では特に防除を徹底して下さい。

 

7月9日斑点米カメムシ注意報発令‼!
平年より多く、前年よりやや多い。今年はホソハリカメムシ、カスミカメムシ類が多く見受けられています。

 

 

 

近くの圃場でたくさんのカメムシを発見しました。

ホソハリカメムシ 体長10~15mm程度。飛行性があり長距離で移動する。加害力が強く未熟後半まで斑点米を生産する。

 

アカスジカスミカメ 体長5mm程度。飛行性だが飛行力は弱く近距離で移動する。加害力は弱いが大量に発生し、米が固まる前に加害されると奇形米や減収につながる。

 

★ニカメイチュウの発生も、地域により多く見受けられています!

毎年県内各地で被害が散見されています。圃場で散見されたり、前年多かったところは防除を行いましょう。

 

★いもち病・紋枯病等にも要注意

6月22日の梅雨入り後、雨が多く、気温高く、葉いもち病が発生しやすい状況でした。ただ梅雨明け後は、暑い夏が予想されています。前年、紋枯病が発生した水田では、菌核が残っており本年の伝染源となります。冷夏の時は、いもち病、暑い夏は紋枯病に特に注意です。

いもち病……葉いもちが発生している圃場では、葉いもち病斑から穂への感染を防ぐため、出穂直前の防除は必ず行ってください。

紋枯病……穂ばらみ期の発生株率が、早生では10%以上、中生では20%以上ならば防除が必要です。

 

最後に

この夏農作業中の熱中症での死亡者が全国で急増しています。

こまめな水分補給を!

 

★米は地力でとれ

転作ローテーションもあり、地力の低下が年々著しくなっています。近年異常気象が発生し、コメの品質・食味低下につながっています。早めに「土づくり」に取り組み、品質向上に努めましょう。

①    土壌改良資材・有機物の施用・・・圃場の乾田化による地力の低下対策を行う

②    10月中旬までに秋起こし・・・稲わらの腐熟の促進を図る

③    深耕・・・・作土深15㎝以上を確保(根を深く張らせることで、高温に強くする。)

 

次回は収穫後、本年度の結果をもとに振り返ります。